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juillet 12, 2010

祝祭の時間にリアリズムは要らない!

 参議院選の開票速報からW杯決勝になだれ込み、そのまま朝を迎え、月曜の仕事がやっと終えた。1日の間に、いろいろなことがあった気がする。
 ファイナルの結果は周知の通り。イニエスタの1発でスペインが延長を征した。「物語」のフィナーレとしては最高だ。スペインの中盤を徹底して潰しにかかり、オランダは何枚イエローを貰ったのか。ついに最後はハイティンハが退場になった。W杯という祝祭の場で、リアリストが勝利を収めるのはまちがいだ。祝祭という場は、それこそリアリズムが支配する日常からもっとも遠い別の規則が支配する。その祝祭を遠くから見守るぼくらにしても、不断ならとっくに眠りについている時刻に無理矢理目をさまして、祝祭につきあっている。同じフットボールでも長いリーグ戦ならリアリズムへの執着も分からないではない。だが、今日、ファイナルのピッチに立つ2チームでさえ、今日で7ゲーム目。チャンピオンズリーグを含めれば50ゲームを越えるビッグクラブの日常とは正反対の非日常の7ゲーム。しかも4年に1度の7ゲーム。それに多くのチームは、わずか3ゲームしかできない。その4年間の間には、もちろんユーロもあったけれども、真剣勝負はほんの数ゲーム。ここが祝祭の場として、多くの人々の注目を浴びるのなら、その場にリアリズムを持ち込むのは犯罪的だ。
 徹底して中盤を潰し、ロッベンで勝つ、というオランダの戦略は、だからぜったい阻止しなければならない。多くの人々は、ここまで2失点しかしていないスペインのディフェンスを誉めるが、いつだってスペインのディフェンスが優れていたことなどない。ポゼッションが高いので、常にパスが繋がるので、ベタ押されのディフェンスなど、このチームにはあり得ないのだ。ブスケツとシャビ・アロンソのふたりのボランチがしっかりしていれば、プジョルやピケがおたおたすることは少ないはずだ。
 だが、結局、延長。スペインの出来がそんなによくない──なにせ中3日だ──のと、オランダの体を張ったディフェンスのせいで、ボールは支配するが点が入らないという、この種のチームに典型的な膠着状態が続く。デルボスケは、珍しく次々に手を打っていく。まずペドロを外し、ヘスス・ナバス──これは彼の癖だ──、ついで、シャビ・アロンソを代えてセスク。つまり、ブスケツをアンカーに4-1-4-1。最後に、ちょととキレを欠いていたビジャ、アウト、満を持してトーレス、イン。(でも残念ながらトーレスは怪我)。しかし、延長に入って、スペインのボール回しはオランダをますます圧倒した。そしてセスク→イニエスタで勝ちきった。
 緒戦の対スイスに負けてから、ここまでスペインは、少しずつ上昇カーヴを描き、おそらく対ドイツ戦でピークだったろう。
 リアリズムのオランダに苦言。クライフが泣くぜ。もしオランダが決勝でリアリズムを捨てて、真っ向勝負だったら、ぼくらにはもっと楽しい120分だったはずだ。今回のW杯では、両チームがピッチに出てくるのが、正面から捉えられ、選手たちに先立って入場する審判団の中央にいる主審が、通路の中央に置かれたジャブラニを両手で持ってピッチに入る映像が必ず流れる。レフリーの両手がジャブラニを持ち上げる瞬間がとてもよかった。「祭よ、始まれ!」という感じだった。

投稿者 nobodymag : juillet 12, 2010 11:16 PM