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2005年10月10日

『海岸地』(アルベルト・エリンフス、オウジェニー・ヤンセン)。河川と陸地の間の、土手のような中間地帯をカメラは静かに捕らえ続ける。
そこにいる家畜、人間、花木といったものを7年間に渡って撮影し続けながらも、監督たちはわずか70分の作品に作り上げている。しかも「year 1」「year 2」という記号的な章立ての下、1年1年がすべて約10分という長さに機械的なまでに凝縮されている。そのわずかな時間の中に、人の死、建物の解体、道路の開通など、綿々と続く日々の生活に変化を与えるような場面の映像が入り込む。ただしそれが、ひとつの方向性(たとえば進歩や近代化と呼ばれるような)をもった徐々に進んでいく変化の一部分なのかはわからない。たとえば、兄の急死を知った男性が淡々と語るような、季節や自然の営みのサイクルを越えたところにある反復(「10年前上の兄が死に、今日その下の兄が死んだ」)に、この作品は触れている気がした。(結城)

投稿者 nobodymag : 2005年10月10日 11:16