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2007年10月20日

Rest is Silence : フランス対アルゼンチン 10-34

 リヴェンジを目指したフランスが返り討ちにあった。
 もう冒険は終わった、という詠嘆があって、フランスにモティヴェーションはないだろうと思われたが、ゲーム開始当初は積極的にボールを回し、タッチライン際まで良いボールが渡った。だが、リヴェンジの気持ちが逆に災いして、狭いところの勝負に落とし込んでいった。FW戦。アルゼンチンのトライラインを目前にして、フレアどころか、往年の「明治大学」のようなモール一辺倒のアタックに終始する。相手はディフェンス力では今回のW杯随一のアルゼンチン。いたずらに時間を浪費するだけだ。仕方なくボールを出してもアルゼンチン・ディフェンダーの餌食。誠実さと低さについてはナンバーワンのアルゼンチンから、この展開でトライを奪うのは困難だろう。
 つまり、冒頭ではけっこうボールを回したが、ゴールラインに近づくとFW勝負。このゲームにあたる戦術がまったく統一されていない。ディシプリンが徹底されていたオールブラックス戦はともあれ、フレアか、ディシプリンかのディコトミーでチーム作りを進めてきたラポルトの方法は、このゲームで完全に破綻したようだ。
 カウンターに出ると当然スペースが空き、外側で勝負に出ようとすると、アルゼンチンのバック3が強烈に突き刺さり、逆にカウンターを食う。トライ数1-5という数字はフランスの完敗を示しているが、FWだけに活路を求めたこの日の戦術は完全に失敗した。
 フランス語でMatch spécutaculaireと言えば、「見ていて面白いゲーム」であると同時にボールの移動が大きく「スペクタル」なゲームでもあるが、このゲームで「スペクタキュレール」なアタックを見せてくれたのは、アルゼンチンだった。カウンターからディアゴナルにフォローし、トライを奪い、接点で厳しく当たって、ターン・オーヴァーから一気にアタック。まるで今までエルナンデスのキックを活かすために封印してきた多様なアタックを、ピッチを広く使って展開する。解説の小林さんは「まるでフランスみたいですね」とアルゼンチンを賞賛していた。この大会に関しても初戦と3位決定戦が同一マッチになり、この大会でチーム力が向上したのはアルゼンチンだったということを点差が証明した。
 ベルナール・ラポルトの8年間は、結局、完全に失敗に終わった。99年W杯の準決勝、91年W杯の準決勝で、それぞれオールブラックス、ワラビーズ相手に見せてくれたフレアの神髄の一端もみせられず、このチームは終わった。少々古典的かも知れないが、「スタイルの戦い」をもう一度復興しない限り、リュグビー・フランセに未来はない。

投稿者 nobodymag : 2007年10月20日 14:24

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