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2007年10月21日

Importance of Being Patient:イングランド対南アフリカ 6-15

 ディフェンス勝負、しのぎあいの決勝戦らしいゲームになった。それが面白いゲームかといえば、正反対で、なかなか点が動かないスタティックなゲームなのだが、それも仕方がないだろう。
 戦前の予想ではスクラムのイングランド、ラインアウトのスプリングボクスということだった。そしてイングランドの1番シェリダンは予想通りボクスFWをめくり、ボクス5番のマット・フィールドは予想通りイングランド・ボールのランアウトを何度かスティールした。だが、ディフェンス・ゲームになるのはそれからだ。イングランドはボールを保持しながらもボクスFWを圧倒するには至らず、ボクスもターンオーヴァー、あるいはインターセプトからのカウンターを仕掛けるには至らない。つまりPG勝負になる。どちらのFWが自陣を背に我慢し続けられるか、そして、我慢できない場合のウィルコとモンゴメリーのキックの調子はどうか、ということ。
 こうしたゲームでは、そんな予想を誰でもが立てるし、そして、その通りになるのだが、だからといって退屈なゲームになるというわけではない。壮烈な局地戦が展開されているからだ。マーティン・コリー、ムーディー、そしてスカルク・バーガー、ジュアン・スミスといった面々がラックに突っ込んでいき、ぎりぎりの攻防を仕掛けている。SH、SOにクリーンなボールが出てライン攻撃ということは起こりにくい。キックを追うサッキー、そしてハバナ、そしてピーターセン。そしてそこにいち早く到着したフランカー陣によって再び局地戦が展開し、そして、タッチキックかオープンサイドへの地域を取るキック。またハバナ、サッキー……。
 結局、長い距離をステインが放り込んだスプリングボクスに一日の長があったということだ。それにしてもイングランドはここまでよく頑張ったと思う。このチームに「処方箋」がなかったときから、ウィルコが復帰し、ヴェテラン勢が最後の力を振り絞り、シェリダンはスクラムで頑張り続けた。準優勝は賞賛されるべきだろう。もちろんアシュトン・ヘッドコーチへの賞賛ではない。彼は何もしなかったし、彼によってゲームが勝利に導かれたわけではないのだから。一方のジェイク・ホワイトのチームは、ハバナを始めとする快足バックスを一応封印して、勝てる決勝戦を作ってきた。トライネイションズで前半だけはオールブラックスやワラビーズを圧倒しながら、後半になるとフィットネスが落ちる欠点を克服し、最後まで「切れない」チームになってきた。このチームの白眉は決勝ではなく、対アルゼンチン戦、つまり準決勝だった。出来が悪かったとは言え、アルゼンチン相手に我慢し、ハバナで勝った完勝のゲームは、3位決定戦でのアルゼンチンを見れば、ボクスの強さを逆に照射しているようだ。
 とりあえず4年に一度の祭は終わった。満足度は大きくない。そのことについては、次回、今回のW杯を総括しながら考えてみたい。

投稿者 nobodymag : 2007年10月21日 16:12

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