02.11/10

 

 マフラー、手袋、帽子と、あらん限りの力をふりしぼって小物類を総動員しても、秋口の格好の延長で凌ぐのは到底無理な季節がやってきた。11月7日は立冬であり、いま天気予報を見る限りでは明日の東京の最低気温は6度、である。とはいえ、東京で生活し自分の車など持たないで公共の交通機関をするほかない、しがない学生の身分であってみれば、コートを着る機会がなかなかない。バスや電車に乗ってしまえば、無意味に暑い。秋口の格好で十分だ。本格的な防寒具が必要なのは、実際、家を出て駅にたどり着くまでのほんのわずかな間だけ、ということになる。
 故あって昨日観たジャ・ジャンクーの『プラットホーム』では、地面に薄く積もった雪を玄関の前だけホウキで掃いているシーンがあった。話に聞いたところによると、実家のある山形では既に一面の雪景色であるという。基本的に出不精な性質であるから、格好の地理的条件にもかかわらず、なんでただでさえ寒いのにますます寒いところへ出てゆかねばならないのかと、これまではウィンタースポーツをしようという気にもならなかった。だが今年の冬は、友達が古くなったボードをくれるというし、せっかくだから出かけていって、本格的な防寒具にまる1日身をつつんでいるというのも、たまには悪くないか、などと考えている。

結城秀勇

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