noboody次号では、原宿、表参道、同潤会アパートなどが特集される。そのようなわけで、一人スロウスタートで表参道をフラフラ偵察してきた。渋谷や、銀
座などと比べると表参道のスピードはゆっくりな気がする。それは、同潤会アパートの古さのせいだろうか。ずらっと並んだケヤキが影を落とすからか、高い
ビルやネオンが少ないせいだろうか。渋谷の、せかせかチカチカと襲いかかってくるようなビルや、フライング気味で動き出す横断歩道もない。歩道橋を上
り、下を車が通り、軽く振動を感じながら横断する。高さや奥行きが見える。雨が降った後だったので、表参道で列をなして信号を待つ車の赤いテールランプ
がぼやっとにじんで光っている。そして、その赤い光はずっと奥まで連なっている。周りには、ケヤキ。ケヤキの合間から空が見える。歩道橋の高さが目線の
視界に、空を見ることを可能にする。
参道という名のごとく、少し青山通りや、明治通りから入ると直線に広がる、抜けた視界は少し違う場所に入ったかのように思える。音に合わせて動く等身大
サンタも、私の吐く白い息も、スロウスピードな気がする。しかし、どうやらケヤキの外側での変化のスピードは加速しているみたいだ。
瀬田なつき