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juin 14, 2008

So young, my lord, and true.

 ブフォンがムトゥのPKを止めて、何とかイタリアが希望を繋ぐ。だが、大した希望ではない。ドナドーニは大幅にチームにいじり、確かに緒戦よりも良くなりはしたが、それでもユーロのピッチを支配するようなチームになっていない。
 そしてオランダ対フランス戦。左サイドバックにエヴラ、そして右のミッドフィールドにゴヴー、ワントップにアンリ。現在のフランスの面子を考えればベストの選択だろう。そして、後半から疲れてくるロートル陣に代わって、次々に87年世代を投入する。フランスの戦略はそれしかない。対するオランダは、もちろん、変わる部分など何ひとつないはずだ。対イタリア戦はすべてうまくいったのだから。
 もちろんフランスのミッドフィールドは気力にみなぎっている。当然だ。対ルーマニアのドローの記憶を消し去り、「死のグループ」を優位に進めるには、ここでオランダに勝つしかない。だがマケレレの獅子奮迅の活躍とリベリの縦横無尽のドリブルだけで、オレンジの壁を突き破ることなどもうできない。トップに文字どおり「どっしり」腰を落ち着けたアンリには、もうアーセナル時代の輝きは消えているし、左サイドを自らのドゥリブル領域にするリベリがいては、アーセナル時代にアンリがもっとも得意にした左サイドを駆け上がって中央に持ち込んでシュートという「アンリ・フィールド」がまったく使えない。アンリはクラウチではない。仕事の場所が与えられなければ、ただのヘディングの下手くそな男に過ぎない。もともとはウィンガーなのだ。ドメネクが何を考えているのかいつも分からないが、このゲームでもまったく分からなかった。チームを作ろうという気があるのか? セレクショナーでいるだけで勝てるほどユーロは甘くない。
 オランダと比べれば、その事実ももっと明瞭になる。対イタリア戦のとき、オランダは、とてもシステマティックだとぼくは書いたが、4-2-3-1というシステムに最適な人材を各所に配している。それぞれがいくつものことを一度に考える必要はなく、与えられた仕事をきっちりこなせば、自ずと答えが出るように作られている。それに対してフランスは、ボランチとセンターバックの各2名を除いて、どのメンバーも難しい応用問題を与えられアップアップだ。もちろんヴェテラン揃いだから応用問題など簡単に解けるのかも知れないが、やはり解くまでには時間がかかる。適性を思考された上でのオートマティスムと個人の自由の名の下に与えられた重すぎるタスク。オランダとフランスの差異はそこにある。それはそのままファンバステンとドメネクの差異だろう。
 圧巻は後半だった。0-1で前半を終えたフランスが、ギアを入れ替えるのは分かっている。そこで後半アタマからエンヘラールに代えてロッベン! 55分にはカイトに代えてファンペルシ! 押し込まれると次々にFWの選手を入れていく。師匠のクライフそのままの采配。これで4-2-3-1からオランダ伝統の4-3-3。押されながらも、前戦とディフェンダーまでの距離を縮めてカウンターアタックの準備をする。そして、それが見事に当たってしまう。まずロッベンの高速ドゥリブルからファンニステルローイ、そして再びロッベン、さらにファンペルシで1点。アンリに1点を奪われた直後には、ロッベンが左サイドを駆け上がってそのまま1点。フランスが、オランダのゴール前でパスを短く繋いでいる間に、ピッチを大きく使うオランダ2点決めてゲームに決着をつけてしまう。ドメネクが動くのは、そこからで、マルーダに代えて何とゴミス!(ここはベンゼマでしょう!と誰もが思った。)そしてこの日活躍したゴヴーに代えて何とアネルカ!いったい何を考えているのやら? 注目された87年組もこのゲームに使われなかった。今さら言っても仕方がないが、フランスの敗因はドメネク。
 ロスタイムにスナイデルが正面から決め、歴史の明らかな変化をピッチに刻み込んだ。ゲームの余韻が残る翌朝には東北地方を大地震が襲った。幸い四川に比べれば被害は少ない。『そして人生は続く』を思い出す。

投稿者 umemoto youichi : juin 14, 2008 11:11 PM