2.16

テレビ中継/アイスホッケー/アルペンスキー

それにしてもオリンピックのTV中継はナショナリズムのみによって成立している。特に地上波での中継録画は徹底して「日本選手応援モード」。スケートのショートトラックやスキーの複合など、多くの人は4年に一度しか見ないのだろう。
一応ノルディックの複合はワールドカップがスカパーで中継されることもあるのでエアチェックしている人もいるだろう(たとえば僕)が、ショートトラックやリュージュといった競技は本当にマイナーだ。
ソルトレイクの中継を見ていてもまったくフォトジェニックではない。
特にリュージュの観戦は抽象的だ。画面上のタイムと氷の壁とリュージュに乗る選手しか見えない。リュージュが中継されるのも日本選手が出場しているからで、他の理由はない。ショートトラックもメダルの期待がかかっていたからに過ぎない。
こうしたことはどの国で中継を見ていても対して変わりはない。
オリンピックというのは崩れ行く国民国家へのノスタルジーなのだ。そして僕はそのノスタルジーを否定しない。オリンピックぐらい同じ町内の人の応援に回ってもいいだろう、といういつもの理由を繰り返しておく。

でも、スポーツ・ファンは、国民国家へのノスタルジーばかりでTVを見ているのではない。たとえばNHLならスカパーで何試合も放映されるのに、2次リーグの重要な緒戦であるカナダ対スウェーデンが放映されないのはなぜか? だいたい今回はアイスホッケーの中継が今日までほとんどない。NHLの諸チームとはちがうナショナルチーム同士のゲームが見られないのはとても残念だ。その代わりライヴで中継された(BS)のは、ベラルーシ対エストニア!なんでこのゲームが中継されたのか?まあ大方の予想に反してエストニアが圧勝したが、それでもアイスホッケーは本当に面 白かった。
かつて国土、西武、王子の3強が存在し、若林兄弟やオマリが活躍していた頃の日本リーグは代々木室内競技場を満員にした。僕も何度も代々木に通 った。特に若林兄のスケーティングは本当に凄かった。当時の代表チームの監督は後に国会議員になった田名部匡省で、西武のセット、国土のセット、王子のセットがそれぞれFWを作り、岩本、引木といった往年の名選手がFWをリードしていた。
もちろん、ソルトレイクには日本代表は出場していない。岩倉組や古川といった古豪チームが解散し、一時期の人気は昔話になった。でもアイスホッケーは面 白いスポーツなのだ。中田や小野のような奴が出てきてNHLのスターにでもなれば話は別 だろうが……。

そして何と言っても冬季のスポーツの華はアルペンスキーだ。
一時期はフジTVがワールドカップを全戦中継していた。スラロームの岡部が第1シード入りしていた時期だ。キッツビューエルのハーネンカム・レースやヴェンゲンのダウンヒルを毎年楽しみにしていた。だが、岡部の跡を継ぐ木村公宣が長野で惨敗すると、フジも中継権を手放し、スカパーのみの中継になってしまった。ソルトレイクではまだダウンヒルと複合が終わったばかりだが、日本選手──皆川健太郎──に注目が集まっていないせいか、中継でも割を食っているようだ。 やはり冬季のスポーツはフィギュアやアイスホッケーを除いてヨーロッパのスポーツなのだ。ヨーロッパ・ジャンプ週間の賑わいや、アルペンのワールドカップの集客力を見ても、選手たちは晴れがましい気持ちになるにちがいない。白い雪が真っ黒に染まるほどの大観衆の中に吸い込まれるように飛ぶジャンプや、ヨーロッパ・アルプスの名峰の見事な景色の中を疾走するアルペン競技。アメリカの風景には似合わない。それともスケートについて書いたように、競技の質が変わり、僕が見たいと望んでいるようなシーンにはもう出会えないのだろうか?否、そんなことはあるまい。今年のヨーロッパ・ジャンプ週間の最終戦ハンナヴァルトが4連勝するかどうかの瞬間、ヨーロッパ・アルプスの小さな村の風景は、まさに世界の中心だった。
F1のモナコが美しいようにビショクスホーフェンのジャンプ台もとても美しかった。演出などなくても、そこにスポーツがあるがゆえに僕らは興奮して緊張する。
演出という予定調和を欠いているがゆえに、僕らは未知の未来に、不可視の世界に大きな期待を寄せる。それがスポーツなのだ。

ソルトレイクでそんな瞬間に出会うことができるだろうか?