2.18
スキー ジャンプ団体
昨日の続きで団体競技。ジャンプ。
「感動の長野」以来、多くのファンはジャンプの団体を見ていないだろう。おそらく長野以前に団体を見たのは、リレハンメルの「原田の失速」だろう。何年かに一度しか見ない競技──それがオリンピックだ。
実を言えば、僕は、今までにこの日記に書いた内容をすべて否定するようだが、密かに今回、銅メダルはあるのではないかと思っていた。絶不調の葛西を外し、19歳の山田大起を起用するニュースを聞いたからだ。これも前に書いたが、もうオリンピックに「リヴェンジ」ほど似合わぬ
ものはない。個人の怨念を祓うほどレヴェルの低いゲームではないからだ。だから葛西個人に何の恨みもないが、この起用法──バイツ・コーチには何度も批判を書いたが──は正しい。今回は4人が飛ぶ順番も正しい。原田、山田、宮平、船木の順番以外ないだろう。ワールド・カップやヨーロッパ・ジャンプ週間の成績を見る限り、今の日本選手では山田に一番可能性がある。ヨーロッパ・ジャンプ週間でも1本目は3位
に入ったことがあったのではなかったか。今シーズンのワールド・カップで原田は1度4位
に入り、宮平は安定した成績を残している。ワールド・カップの開幕当初こそ、船木は3位
に2度入ったが以後表彰台はない。葛西は2本目に進めないことも多かった。
この4人の選択は正しいとして、なぜ銅なのか?
ドイツは抜けている。フィンランドはマッチ・ハウタマキの台頭著しい。オーストリアはヴィドヘルツルが不調だ。解説の小野はスロヴェニアが怖いと言っていたが、ペテルカはまだ復調途上なような気がしていた。つまりオーストリアと日本が好勝負で銅争いと僕は読んでいた。それに昨年ソルトレイクで行われたワールド・カップの団体で優勝したのは何と日本だった。
しかし結果は5位。
複合のように惨敗とは書けない。今のベストがこの成績だろう。勝敗の分かれ目は、スロヴェニアのクラニェッツが133メートルのスーパージャンプを決めた1回目の2人目で山田が111メートルだったことだ。この22メートル差を得点に換算すると約40点になる。仮に山田がクラニェッツと同じ飛距離ならば、銅はあった。スロヴェニアとの最終的な点差は20,3なので、もし山田が2本合わせてあと12メートル飛んでいれば──ワールド・カップの戦績から考えてそれはかなり確率の高い数字だ──、銅は十分にあった。つまり、山田の失敗を除けば、原田も宮平も船木も現在の力を出しきった。その意味で「皆、力を出したよ」という原田──金のドイツの4人目マルティン・シュミットはフィンランドとの僅差の勝負の最終ジャンパーと務め、リレハンメルの原田を思いだしたという談話を残した──の談話はまちがっていない。
ジャンプ団体ではスーパージャンパーは不要だ。スイスのシモン・アマンもポーランドのアダム・マリッシュも関係ない。突出したジャンパーがいなくても選手層の厚さで勝てる。ドイツ、フィンランドはスーパージャンパー(ハンナヴァルト、シュミット、ハウタマキ、アホネン)がいる上に選手層が厚い。
日本チームの場合、複合とちがいジャンプにはまだ貯金があるようだ。原田に往年の力がないことはソルトレイクでスーパージャンプが1本もなかったことが証明している。今回、メダルに届かなかった原因は3つしかないだろう。
まだ原田を1人目に起用しなければならない事実。これがまず大きい。つまり、葛西の不調だ。この選手はなぜかオリンピック・イヤーの前年に調子がいい。昨シーズンはワールド・カップでも勝っている。29歳という年齢は、原田を見ればまだ老け込む年ではないことぐらい分かる。葛西の調子をピークに持っていけなかったこと。夏の陸トレから含めたコーチ陣の失敗だろう。「リヴェンジ」は似合わないのだが、この選手は日本選手の中でもっとも才能があるという事実は皆が知っている。
2つ目は、吉岡だ。吉岡を知らない人もいると思うが、船木を育てた八木コーチが所属するデサント・チームの逸材で、昨シーズンのワールド・カップでは何度も表彰台に立った。彼は今シーズン調子を落とし、ワールド・カップでは2本目に進めることがほとんどなく、代表入りを逃してしまった。もし今回の代表が、吉岡、宮平、葛西、山田、船木で構成されていたとすれば、チーム力はもっと上だったろう。
そして3番目の原因が船木、葛西の頭の突っ込んだジャンプを見れば分かるが、テクニックの大きな変貌だ。ハンナヴァルト、マリッシュ、アマンの活躍で、こうした技術革新の重要性が理解されるにちがいない。山田の好調時を見たことのある人──ジャンプ週間での彼は本当に輝いていた──なら、彼の技術が一番、マリッシュやアマンに近いことを実感するだろう。
競技が終わったのは日本時間で午前3時半。告白するが、クラニェッツのスーパージャンプを居眠りをしていてライヴで見損なった。やはり冬季オリンピックはヨーロッパか日本で開催してほしい。と書きつつ、今夜は、サッカーのチャンピオンズ・リーグのユヴェントス対ラコルーニアが午前3時半からWOWOWでライヴ中継されるのを思い出した。『アイズ・ワイド・シャット』の次の番組だ。
大学の教員でもある僕にとってスポーツ観戦は辛い。後期分のレポートの採点をどうしよう?
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