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2006年06月27日

カテナッチオ・ドッピオ

 ロスタイムのトッティのPK。自分でも絶対はいると思ったと話しているが、キックの体勢に入る前の表情がとても良かった。高度のプレッシャーに晒されている場面だろうが、2002年から、この「ローマのプリンチペ」も精神的に成長した。

 先発はトッティではなく、デルピエーロ。この選択に意義を唱える者は少ないだろう。ガンガン攻めてくることが予想されるヒディンク=オージーに対抗するには、アタックのみのトッティよりはアレックスのまじめさを取るリッピの選択は正しいと感じられるからだ。それにジラルディーノ、トニの左下にアレックスを置く変則的なスリートップがどのように機能するのか見たい気持ちもあった。前半は、一応フィフティフィフティの展開だが、ジラルディーノもトニもシュートを外しまくる。

 そして後半、問題のシーン。怪我のネスタの代わりにセンターバックに入ったマテラッティが1発レッド。必ずしもレッドに値しないような感じだったが、今大会のジャッジは厳しい。
 そこからがリッピ=イタリアの腕の見せ所だった。 後半はスタートからジラルディーノに代えてイヤキンタを入れていた。そしてマテラッティがレッドで退場すると、トニに代えてディフェンスのパンツァッリ。ディフェンスの人数は4人。そして中盤にペロッタ、ガットゥーゾ、ピルロ、そしてアレックスとイヤキンタ。これでオーストラリアのアタックを守りきってしまう。確かにポゼッションはみるみるうちに落ちていったが、落ちたのではなく、落としたのであって、オージーはボールを回すものの、決定的なチャンスを作ることはできない。城の周囲をぐるぐる回るだけの軍隊。あるいは、騎兵隊の周囲をぐるぐる回るインディアンのような状態。中に少しでも攻め入ると、痛い目に遭う。そんな感じ。もちろんカンナヴァッロの頑張りは本当にすごい。ヴィドゥーカを完封。まったく仕事をさせなかった。格の違いってやつだね。普通だったら焦って、ボールを前に運んでしまうところだが、ガットゥーゾをはじめ中盤の砦でいる者たちも砦から外に出てこない。ピルロも気が利いたパスを控えてクリア。

 きっと延長だろうな、と誰でもが思った停滞状態の75分。アレックスに代えてトッティ。マルチェロ・リッピは役者だね。皆が、そろそろあいつを出せよと思い始めた頃合いにそいつを出してくる。つまり「俺は勝つつもりだ」という強烈なサインを送っている。我慢が快感に変わり始める。カテナッチオとはマゾヒズムの極致だね。ロスタイム。まだヒディンクは動かない。やっぱり延長か。そんなとき左サイドバックの長身ディフェンダーのグロッソが満を持して左サイドを突破。そしてPK。イル・プリンチペのキックがオージーのゴールネットの天井をぶち抜いた。

 イタリアはカテナッチオを棄てて4-3-3できている。ディフェンスの時代ではなくアタッキング。フットボールだ。けれども昔覚えた必殺のディフェンス方法は誰も忘れていない。体が自然に目前の敵を封じ込め、ゴールマウスを封印してしまう。スカパー!に出ていた自由が丘のピザ屋のアンジェロさんは、「これがカテナッチオ、しかもドッピオね!」と叫んでいた。

投稿者 nobodymag : 2006年06月27日 23:04