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2006年06月17日

コートディヴォワールに足りないもの

 セルビア・モンテネグロに圧勝したアルゼンチンには驚かされた。もちろんメッシやサビオラの溌剌としたプレイぶりも圧勝の原因だが、それよりもセルビア・モンテネグロの完敗ぶりには目を覆った。ピクシーやオシムという固有名とともに、セルビアのフットボールは、華麗で誠実なものだったはずだが、このゲームを見る限り、復興は遠い。ユーゴ内戦時代に国外にあった選手(ピクシーなど90年のイタリアW杯代表)やオシムなど指導者は別にして、同時代にユース世代であり、これから才能を開花させる年代の選手たちには大きな傷を残しているにちがいない。0-6という数字はもちろんショックなものだが、フットボールには何よりも戦争が似合わないことを教えてくれる。

 そしてコートディヴォワール対オランダ。1-2。コートディヴォワールは同スコアで2連敗し、決勝トーナメントはアルゼンチンとオランダの進出となった。コートディヴォワールが内戦状態にあることは周知の通り。ドログバ、トゥレを始めとする主要な選手は全員ヨーロッパでプレイしている。対アルゼンチン、対オランダ共にコートディヴォワールの方がよいフットボールをしていたことはゲームを見ていた人ならほぼ共通して持つ感覚だろう。だが、勝てない。老兵アンリ。ミシェルのせいかもしれないが、端的にシュートが入らない。シュートのタイミングが悪い。打つべきところでドゥリブルし、シュートのタイミングでパスを選択している。コンビネーションのプレイが少なく、ほとんどが個人による突破からチャンスを作っている。アフリカの選手というと「身体能力」という言葉が枕詞になっている。確かに全員「身体能力」は高い。普通は、それが荒削りでチームプレイが戦術が身に付けばもっと上まで行けると言われてきた。カメルーン然り、ナイジェリア然り。だが、今回のコートディヴォワールは、そういう常套句が成立しないチームだと思っていた。何せチェルシーやアーセナルの主力が、主要なメンバーなのだ。中盤の底のヤヤ・トゥレはオリンピアコス、先発のFWコネ兄弟はPSVとニース。アフリカでプレイするのはチュニジアにいるGKのみ。彼らにとっては代表チームでプレイするよりも所属チームでプレイする方が楽しいだろうし、代表としてアイデンティティを持つよりも、彼らはフットボールの才能によってノマードとなることを選んでいるのではないだろうか。もちろん同じ育成施設(これについては何度も報道されている)出身ということはあるだろうが、かつてのフランス代表のドゥサイイや現代表のヴィーラを見れば判るように、アフリカを代表してプレイする意識がそれほど大きくないのではないか。もしもコートディヴォワール(軍事)政府がフットボールチームを国連等への和平の口実として利用したいのなら、もっとカリスマ性のあるコーチを連れてくるできだろう。このチームがどんなフットボールを志向しているのか最後まで判らなかった。ポゼッションし、シュートは打つが入りそうもない。ディフェンスをどうやって崩して、どうやってフィニッシュするのかついての意思統一がない。アルゼンチンのペケルマンの指導力、オランダのファンバステンのカリスマ性がこのチームには不足していた。

 そしてオランダには失望した。ロッベンがエブエに押さえられると、フリーキックしか点が取れない。ファンニステルローイは明らかにオフサイドだった。クライフはどう思っているのだろう?

投稿者 nobodymag : 2006年06月17日 20:56