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juin 21, 2010

愛というのは儚いものだ

 スカパーの日本戦を見ると必ずオシムさんが登場する。オランダ戦の評価を巡っても、オシムさんの「お言葉」は面白かった。「このゲームは、教科書的な敗戦だ。だから学ぶべきものがたくさんある」から始まって、司会の倉敷アナの「日本代表への愛情ある言葉をありがとうございます」と締めくくると「愛というのは儚いものだ。いつも花に水をやらないと死んでしまうように、いつも水をやらないと枯れてしまう」とおいしい言葉を吐いていた。もちろん「大久保はエゴイスト!」というゲームを見ていれば皆が納得する指摘も忘れはしない。「悔しい」と語る岡田武史の目は潤んでいた。
 0-1という点差は、決定力の差だ。ファン・ペルシもカイトもできが悪かったのが、スナイデルはディフェンスの一瞬の綻びを見逃さなかった。対するオランダ・ディフェンスは、至る所で綻びを見せるが、本田は押さえ込まれ、大久保がシュートを外しまくり、岡崎も決定機をふかした。
 このオランダでは優勝は無理なのではないか。しっかりしたポジショニングはするけれども、かつてのローテーション・フットボールからは遠い。4-2-3-1という並びを変えず、日本としては、中澤、闘莉王、阿部のブロックを中心に守りを固めるのがやさしい。かつてはクライフを押さえたとしても、ニースケンスがミドルを狙い、ニースケンスを押さえてもクーマンが居た。今のオランダは、個々の能力には優れていても、チーム戦術はとても凡庸だ。右サイドのファン・ブロンクホルストやボランチのファン・ボメルには往年のスピードがなく、攻めは前の4人、ディフェンスは後ろの6人と分業されているだけ。日本代表の善戦は、そうしたオランダの戦術的後退を背景にしている。
 ヨーロッパのチームはどうしたのだろう? 対オーストラリア戦で圧勝したドイツもセルビアに敗れたし、イタリアはニュージーランドとも引き分けてしまった。カンナヴァッロの衰えは目を覆うばかり。至る所にドアがあり、しかもどのドアも開いている。カテナチオは死語になってしまった。それにフランスの内紛はどうだ? アネルカがドメネクに暴言を吐き──誰でも吐きたくなるよね──強制送還になると、今度は選手たちが「アネルカを売った犯人」探しを始め、練習を拒否する始末。貧すれば鈍する。98年の栄光はどこに行った? 06年に決勝を戦った2チームがこの始末だ。

投稿者 nobodymag : juin 21, 2010 11:44 PM