イメージは必ず超えられていく
『夏の娘たち~ひめごと~』
監督・堀禎一&主演・西山真来 interview

『夏の娘たち 〜ひめごと〜』

「あなたに見つめられると、わたしは少女に戻ってしまう…」。シーラ・Eがプリンスに捧げた「Girl meets Boy」の一節の「引用」に始まる『夏の娘たち』を、人はどのような作品だと形容できるだろうか。あるふたつの「イエ」の間に揺れるあるひとりの女性の物語、あるいはあるひとりの女性をめぐるその周囲の人々の物語、もしくはひとつの土地のひとつの季節を数十年や数百年という歴史のただなかに見つめようとする神々の物語とも言えよう。いずれにせよ、『夏の娘たち』はきわめて雄大な作品であり、そして同時にきわめて密やかな関係へと観客を誘うフィルムだ。その創造にはいかなる過程があったのか。監督・堀禎一、そしてこのフィルムの主人公である直美役を務めた女優・西山真来に、この作品とともに過ごした夏の数日について話を聞いた。


2017年7月18日午前、インタヴューにご協力くださいました堀禎一監督が急逝されました。
謹んでお悔やみを申し上げますとともに、心から哀悼の意を捧げます。
NOBODY編集部一同


言葉は言葉としてあれば伝わる

——まず、今回の企画がどのように始まったのかについてお話し頂けますか?

堀禎一:『魔法少女は忘れない』のあとに、一度改めて映画と自分の関係を見直したいと考えていまして、それがこの作品の前に撮った「天竜区」シリーズだったんです。で、この作品の作業がひと段落したころに「R-15で一本撮ってみないか」というお話を頂きまして、非常にタイミングが良かったので「ぜひやらせてください」と返事をして、まず脚本家の尾上史高くんに話をしました。「何かやりたいことある?」って聞いたところ、少し前に企画が通らなかった脚本があると返事があって、それを見せてもらったら面白かった(笑)。それを骨子だけ用いることにして、ふたりで設定も物語も変えていくことになりました。

続き・・・

堀禎一(ほり・ていいち)

1969年兵庫県生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。1994年に佐藤真監督が構成・編集を担当した『おてんとうさまがほしい』にて映画製作に携わり始め、1996年からは小林悟・北沢幸雄・サトウトシキ監督らの助監督を務める。2003年に初監督作となるピンク映画作品『宙ぶらりん』を発表。2007年には初の一般映画作品となる『妄想少女オタク系』で大きな話題を集める。前作となる「天竜区」シリーズは、堀の手がける初のドキュメンタリー作品となった。『夏の娘たち』は『魔法少女を忘れない』(2011)以来の劇映画作品となる。


西山真来(にしやま・まき)

撮影:藤島亮

1984年京都府生まれ。神戸大学在学中に演劇ユニット「象、鯨。」を主宰し、 作演出・俳優として演劇作品を発表。 関西でフリーの俳優として活動後、2011年に上京。以後も精力的に演劇・映画を横断しながら活動を続け、2017年に平田オリザ主宰の青年団に入団した。主な映画出演作に『喧騒のあと』(唐津正樹監督、2006)、『へばの』(木村文洋監督、2008)、『Omokage~面影』(万田邦敏監督、2011)、『乃梨子の場合』(坂本礼監督、2015)などがある。


『夏の娘たち 〜ひめごと〜』

2016/日本/75分/16:9
監督:堀禎一
製作:高津戸顕、森田一人、朝倉大介
脚本:堀禎一、尾上史高
撮影・照明・録音:渡邉寿岳
音楽・音響・整音:虹釜太郎
助監督:永井卓爾
出演:西山真来、鎌田英幸、松浦祐也、志水季里子、下元史朗、速水今日子、ビノシュ、和田みさ、櫻井拓也、小林節彦、川瀬陽太、外波山文明
2017年7月1日より、ポレポレ東中野にて「堀禎一特集」とともに交互上映にて公開
https://twitter.com/natsunomusume

堀禎一特集

上映作品(予定)
『宙ぶらりん(SEX配達人 おんな届けます)』(2003年/64分)
『草叢(不倫団地 かなしいイロやねん)』(2005年/64分)
『笑い虫(色情団地妻 ダブル失神)』(2007年/63分)
『妄想少女オタク系』(2007年/113分)
『東京のバスガール(したがるかあさん 若い肌の火照り)』(2008年/63分)
『憐 Ren』(2008年/101分)
『魔法少女を忘れない』(2011年/93分)
『Making of Spinning BOX 34DAYS』(2012年/89分)
『天竜区奥領家大沢 別所製茶工場』(2014年/64分)
『天竜区旧水窪町 祇園の日、大沢釜下ノ滝』(2014年/27分)
『天竜区奥領家大沢 夏』(2014年/67分)
『天竜区奥領家大沢 冬』(2015年/94分)
『天竜区旧水窪町 山道商店前』(2017年/2分)

期間:2017年7月1日(土)~21日(金) ※夜の時間帯で『夏の娘たち』と交互上映
会場:ポレポレ東中野 中野区東中野4-4-1-地下 www.m m jp.or.jp/pole2/
料金:当日 一般・シニア1300円/大学・専門1000円
前売 フリーパス(数量限定)7000円/三回券3000円