02.11/20

 

 渋谷シネセゾンは水曜日1000円均一だということでジャン=リュック・ゴダールの『恋人のいる時間』を見に行った。ロビーにはプジョーのVOUGEが展示してあり、アンケートに答えると抽選でもらえるらしい。情報誌によると夏木マリや野宮真希といった人たちのトークイヴェントが企画されているらしく、このワクの次回の上映作品はフィリップ・ガレルの『白と黒の恋人たち』なのだそうで、「渋谷」「プジョー」「夏木マリ」「野宮真貴」「フランス」「恋人」なんかの名詞をつないだあたりに、この映画の客層というのは想定されているのだろうか。と、こんなことを考えたのも『恋人のいる時間』の主人公シャルロットは、雑誌やデパートが考える理想の消費者像であるからだ。雑誌が語る「理想の胸の形」に憧れるし、胸の形のために姿勢矯正器具を買うし、高級下着を「プランタン」で新調したりする。1964年の消費者の姿をわざわざ「見に」来る2002年の消費者とは。
 ここで、さっき言った客層とはちょっとズレた消費者が現れる。なぜならこの映画で言っていたように、「見る」(regarder)とは再び獲得することだから(「この“再び”ってところが大事」だと彼女は言う)。「渋谷」「プジョー」「夏木マリ」「野宮真貴」「フランス」「恋人」等々をいったん忘れて『恋人のいる時間』を「見る」という試み。
 そんな試みに大変近いところでnobody5号の「新宿特集」は組まれています。

結城秀勇

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