02.11/25

 

 ジュビロ磐田の完全制覇で幕を閉じた2002年シーズンのJリーグは相変わらず民放でほとんど放送されない。スカパーもケーブルも見られない人間が悪いといえば悪いが、それにしてもだ。ひどい。そんな憤りを感じてか高原は、皆さん御存知の通り、セカンドステージでひたすら暴れた。私事で恐縮だが彼は私と同い歳である。
 さて、夕方前から再び降り始めた雨(何日ぶりだろう)に濡れた渋谷のコンクリートを歩く。『ストーリーテリング』(トッド・ソロンズ)はたった4週間程の公開で今週金曜日まで。映画館を出てもまだ降り続ける雨を避け友人とコーヒーを飲む私には、ちょっとした不安があった。もしかしたらこのフィルムを見て「私が映っている」などと言ってしまう数年後の自分がいるのではないか、という不安。もちろんそんな不安は即効で打ち消されるが、もうひとつ新たな不安。このフィルムがあまりに平凡すぎて、あまりに「時代」(「現実」でも「世界」でもなく)というものと親密でありすぎること、あるいはこれからあってしまうだろうこと。
 とにかく、トッド・ソロンズともやはり口喧嘩はしたくない。口下手な私は絶対負ける。かわりに、高原のワンプレー毎に一喜一憂し、互いに切磋琢磨し合いながら彼と共に生きたいと、そして引退時には涙したいと、そんなことを考えたのだ。

松井宏

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