先週からどうも体調が優れなかったのだが、とうとう気管支炎になってしまった。熱は大してないのだけれど、夜咳き込む度に眠りが遮られ、安眠できないのが辛い。始終頭がぼーっとしている。また、眠りが浅いからか、一晩に断片的な夢をいろいろ見る。そんな中で、見逃していた『バニラ・スカイ』をビデオで見てしまい、余計に頭がぼーっとなってしまった。
要するにこの映画は現実/非現実の境界がなくなるって話だけど、結果として話のオチが非現実的なものなので、いくらデヴィッド(トム・クルーズ)が「本当に生きたい」と言って、屋上から地上(リアル・ライフ?)に飛び下りたところで(いかにも夢から覚める方法の王道だが)、その後開けた目が本当にリアル・ライフを見るかは保証されない。これが本当にデヴィッドという人の夢であるかなんて誰も断言できないのであって、それは彼の顔が端正だったり、歪んでいたり、マスクに覆われていたりで、リアルな彼の顔が断定されないのと同じだ(そもそもトム・クルーズの顔ってぜんぜんリアルじゃないんだよな)。
逆に彼が夢の中でつくり出したとされるカート・ラッセル演じる精神科医(!)が架空の人物であるはずなのに一番リアルなのが面白い。というのは、結局のところ自分が架空の存在であるか否かで葛藤するのは架空の人物とされる彼だけで、架空の人物でないとされる他の人はあっさりと「この世界」を受け入れてしまうから。つまり精神科医にとってこそ、「この世界」(=この映画)は現実で、「別の世界」(=リアル・ライフ)は非現実なのだ。
さらにぼーっとした頭で、本編のあとに付いていたちょっとしたメイキングを見ていると、「『サージェント・ペパー』のジャケットをイメージした作品」とキャメロン・クロウ。なるほどね、「A
Day In The Life」ってことかい?「僕はいつしか夢の中……」。1度くらいは高いところから落ちても醒めない夢を見てみたい。
黒岩幹子