世に名高い港町横浜。その横浜駅からバスで20分、あるいは私鉄と徒歩で30分という場所に横浜国立大学はある。青山真治監督による横浜国大PRビデオ『海流から遠く離れて』は、本日撮影最終日である。
浅間町車庫前停留所、国大前バス停、正門、階段、中央部通路、噴水広場、再び夕方のバス停、アメフト練習風景といった順に撮影が進む。日中は天気がよかったが、風は冷たい。中央部通路、レールによる木漏れ日をなめる移動撮影のカメラ。陽が傾くに連れ、風の冷たさは身に凍む。噴水広場、本作唯一のたむらまさきの手持ちカメラの映像はモニターを覗くことができなかった。これは完成の後の楽しみということに。丁度下校の時刻にぴたりと重なる夕方のバス停では、撮影用にバスを待つ光石研さんの後ろに、帰りのバスを待つ学生が並ぶというアクシデントもあった。
というようなことをつらつら思い出し、とても撮影に同行した者の描写ではないなと考えながらも、そんなただそばで邪魔にならんようにしていただけの私にすら撮影完了の達成感がある。いわんやスタッフの方々においてをや。しかしまだなにも完成したわけではなく、明日からは編集等々のポストプロダクション作業が残っておられる。今日の確かな仕事を明日解体し、組み立て直し、無用ならば廃棄する。現場における昂揚と染み渡る達成感よりも、それらを私よりも多く受けながら、今日の仕事の批評を直に手攫みで次の日から当然のこととして行う人々の姿勢にこそ、映画が想像ではなくものなのであると実感した。
結城秀勇