人間、半年に一度はおバカな買い物をするべきだ。
マルジェラの10(「10」はメンズ、ちなみに「6」はユニセックス)を眺めても全然購買意欲がそそられなくて、あーあと思いながらふらふら店内をぶらついてみる。こういうときはやたらと強気になる。その勢いで店員さんと知ったかぶり会話を交わす。これは結構楽しい。
キャロル・クリスチャン・ポエルだとか、絶対自分に着られないような(お金の問題ではない、断じて)ブランドを通り過ぎて、ああっ、フセイン・チャラヤンのレディースがある。やたらレイヤードにこりまくってて、そのうえスーパー細身。カッコイイ……、と思ったらメンズも置いてあるじゃん! そうそう思い出した、先シーズンからメンズも開始したんだった。展示会形式で発表されたというその写真を見たわたしの首が少しだけ傾いたのを覚えている。
写真ではわからなかったが、チャラヤンの洋服には小さな「無駄」がたくさん施してある。少しだけ捩じ曲げられた縫製、幾重にも重ねられたステッチ、少しだけはみ出るインサイドのレイヤード……。あるいは一見変哲のない半袖の白シャツが、実はTシャツに衿や裾やボタンラインを後付けしたものだったりする(もちろんアンフィニッシュトな縫製で)。シルエット云々以前に、いかに「無駄」な細部を積み重ねながら、覆われた身体を眺める他人に「実感」を獲得させるか。これがチャラヤンの賭けであり、例えば2年前ぐらいから始まったジュンヤ・ワタナベのメンズとは決定的に違う。わたしは絶対チャラヤンを支持する。
以上が2万8千円の半袖シャツの言い訳。人間、半年に一度はおバカな買い物をするべきなのだ。
松井宏