03.1/10

 

 雑誌次号の表参道について考える企画の一貫で、ワタリウム美術館のキュレーター・和多利浩一氏に取材。和多利さんは生まれも育ちも原宿。ずっとあの周辺の変化を見てきた人、ということでお話を伺おうと思い立ったのだが、実はあの界隈の商店街連合会の会長もなさっているということを取材前初めて知った。そもそも商店街というものがあの界隈に存在するということ自体、考えもしなかった。商店街というと、地元民及び周辺の人々が利用するもので、また、商店街のおじさんたちはそれらの人々の出足が向くようにいろいろ画策するものだというイメージがあったから(私自身の実家も片田舎の商店街にあったのだが、ほんとにそうだった)。表参道も含んで原宿は地元民の顔が表に現れてこなくなった街だと思う。でも同時に、あの周辺が他の盛り場と一番違うのは、ちょっと裏通りに入れば住宅街が広がり、たくさんの人が住んでいるということでもあるのだ。
 実際にお話を聞くと、やはりそういった部分が問題としてあるらしく(詳しくは雑誌でどうぞ)、和多利さんは最近商店街の組織とは別に、原宿神宮前まちづくり協議会というものを組織なさったとのこと。「まちおこし」ではない、まちづくり。これはかなり大変な作業である。インタヴュー後、和多利さんはちょうどその協議会の会合で渋谷区役所に行かれるとのこと。「よかったらちょっと見学にきませんか?」とお誘いを受け、一緒にタクシーに乗り込む。キラー通りから明治通りに入ると地下鉄工事中のため道路が通りにくくなっている。その眺めを見ながら「これから2年、原宿は冬の時代になるでしょうね」と和多利さん。確かに、青山アパートの取り壊しを始め、この界隈では今後1、2年様々な場所で建設工事が続くだろう。私は工事後の未来予想図ばかりを頭に思い描いていたが、ここには別の現実もあるのだ

黒岩幹子

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