雨の降る、表参道と明治通りの交わる交差点のすぐ近くの喫茶店で、サッカー評論家の湯浅健二さんにインタヴュー。彼のサイトの言葉にある通り(そしてそれは自負でもある)、彼は「コーチの目」で試合を見て文章を書く。「クリエイティブなタメ」、「無駄なフリーランニング」、括弧に括られた一種独特な言葉遣いを用いた文章が喚起させるのはゲームである。ゲームから出発したはずがいつの間にかサッカー選手という枠からも外れた一個人へのスポットに至る「number」型の文章とは反対に、彼の文章はひとりの選手、ひとつのプレーから出発し、常に過程しか存在しないピッチ上のゲームを形作る。
サイトで膨大な量のJリーグの試合のレヴューを書き続けている彼は、そのような作業を「データベースのようなもの」だと語る。あの時私はこう考えていた、いまはこう考える。その集積の上にまた今日も新しい試合についての思考が上積みされる。それらはひとつの主張されるべきテーゼをなぞるのでも裏づけするのでもなく、絶えずそれが変化し続けているのを改めて認めるばかりである。
結城秀勇