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2005年5月24日

2005年5月24日

みんなはどんな気持ちで「風俗」という仕事に取り組んでいるのだろう。という純粋な興味から、たまたま新宿のある書店で『風俗嬢意識調査』と題された本を手にとった。
目次には、1999年から2000年にかけて、都内と横浜の限定された23件の非本番系の風俗店で働く女の子を対象にした職業意識の調査アンケートの結果が項目別に示されてある。「年齢」から「動機」「罪悪感」「風俗と浮気」といったそれぞれの質問内容は、風俗で働く自分自身にとっても切実な問題ばかりだ。
読み進めると、まず、冒頭での何十にも施された前置きが目を引いた。そこには、調査期間や対象の店舗名、それらを選んだ理由、調査方法や統計方法が、とにかく具体的に詳細に明示されていた。それはきっと、予想される多くの批判への前段階での厳重な対策なのだろう。そしてそのことによって、調査対象つまり冒頭での「みんな」は、可能な限りの具体性のなかで、その輪郭を浮き彫りにしているようだった。様々な条件で限定された「みんな」は、すごく私に似ているように思えた。
さてしかし各章を読み終えると、私はついに初めに示した疑問に対する答えをこの本から得るにはいたらなかったことに気がついた。というよりも、その疑問は途中から消えてしまっていた。それはアンケートの統計報告であるにも関わらず、その回答があまりに細分化されていたからだ。例えば「この仕事に誇りを持っていますか」という質問に対して、もちろんその答えは、はいかいいえかどちらとも言えないの3つに分類される。しかし本書はさらに掘り下げてその理由まで克明に記す。「与えるものがある」から「はい」とか、「人に言えない」から「いいえ」とか、それらの回答は統計である一方でどこか切実だ。本末ではその簡略化された回答の全文を逐一たどることすらできる。匿名性は維持されつつ、それらは徹底的に具体的で、個人的なのだ。私の興味はいつしか「みんな」から、アンケートに答えたひとりひとりへと向かっていった。本書を読み終えると、彼女たちと会うために、実際に示されたお店で働いてみるのも悪くないかもしれない、という思いがよぎった。それは男の人だったらもしかしたら、お客さんとして足を運んでみようと思う気持ちと似ているのかもしれない。「職歴」の調査報告によれば風俗で彼女たちが働く期間は、1年未満が約8割を占めている。なんて短いのだろう。どうして辞めてるのだろう。もっと詳しく聞いてみたい思いがあふれる。しかし彼女たちの大部分はもうそのお店にはいない。本書は、あるとき風俗をやっていた女の子たちのその痕跡を、ただ確かにその内に刻むのだ。

投稿者 nobodymag : 2005年5月24日 00:25