2003/08/12(tue)
トライネイションズ 第5戦 ニュージーランド対南アフリカ

 

 

 毎週ゲームが続くトライ・ネイションズ。スプリングボクスのラストゲームは対オールブラックス戦。このゲームでもスプリングボクスの戦術はクーンのキックとハードなディフェンス。対オールブラックス第1戦で50点を献上したディフェンスをどう立て直すかが課題だった。
 確かにディフェンスは改善された。しつこいボールへの絡みとブレイクダウンでの遅延。スペンサーとバック3というオールブラックス自慢のアタック陣にボールが回らない。ほぼイーヴンの出来で終始した前半は両チーム1トライずつ。13-11というわずか2点差で前半を終えた。差はクーンのコンヴァージョンが決まらなかっただけ。対するオールブラックスは心配の種だったスペンサーのキックが決まった。差はそれだけだ。スペンサーに有効なボールが供給されないオールブラックスはそれほど強いチームではない。クーンのキックで地域を取り、敵陣でゲームを進めるスプリングボクスの作戦は、ここまでは功を奏しているように見える。
 だが膠着したゲームをどのようにしのいでどのように勝つか。スプリングボクスにはその戦術が欠けている。クーンのキックを選択した段階で展開は封印されたも同然だ。ボールは広がらない。オールブラックスのFW陣を完全に崩すにはスプリングボクスの力は足りない。鋭く強いディフェンス。それだけだ。つまりディフェンスは改善されているのだが、そこからどのようにアタックに繋げるのかという別の課題──つまり、負けないのではなく、勝つための課題がこのゲームのスプリングボクスには何一つ解決されていない。確かに対ワラビーズ第1戦でスプリングボクスはしのぎきった。だがわずか5点差はの勝利では、次のゲームの趨勢を占うまでには至らないし、事実、第2戦では9-29で敗れた。
 そして後半、ゲームそのものは動かなかったが、スペンサーが2つのペナルティを決めて、オールブラックスが19-11で逃げ切った。強いディフェンスと有効なキックだけで勝利を収めることはできない。そのことがこのゲームで証明された。勝つためには──何度も書くが──クリエイティヴな展開が絶対に必要なのだ。オールブラックスはクリエイティヴィティを事実上封印されても、潜在的なクリエイティヴィティが勝利をたぐり寄せ──もちろんバック3のことだ──、スプリングボクスは一杯一杯のゲームをして、やっと8点差の敗北。やはり「ガッツ」と「勇気」だけでは勝てない。ゲームには、創造的な思考がぜったいに必要だ。

(梅本洋一)

 

2003/08/12(tue)
コミュニティ・シールド03 マンチェスター・ユナイティド対アーセナル

 

 

 FAカップの勝者とプレミア・リーグの勝者が戦う今シーズンの前哨戦コミュニティ・シールドが行われた。アーセナル対マンチェスター・ユナイティドという好カード。ほとんど昨年と同じメンバーで戦うことを余儀なくされたアーセナルとベッカムの移籍で起用法が落ち着いたマンU──今シーズンのプレミアシップを争うだろう両チームがどんな戦いを見せるのか。昨年のこの大会はアーセナルがダブルクラウンだったためアーセナル対リヴァプールというカードで、見事なフットボールを展開したアーセナルが波に乗ってプレミア・リーグの前半戦を無敗で乗り切った。
 さて今シーズンは? まず何よりもこのゲームが行われたカーディフを含めたヨーロッパの猛暑。この日も35度超のピッチ。両チームの運動量が減るのはごく自然なことだ。オーヴァーラップしたシルヴェストルがヘッドで押し込めば、アンリがすぐに1点を返す。ゲームとして成立したのは、ここまでで特に後半にベルカンプと交代して入ったジェファーズがフィル・ネヴィルを蹴って一発退場してからは、どちらもゲームに対するモティヴェーションが減少した。結局PK戦の末、マンUが勝ったが、見所のないゲームになった。パスはよく回るもののアンリが退いてからは決定力のないアーセナル、ベッカムの代わりにスールシャールが右サイドに入ったマンUはずっと展開力が増す。これらは前年度のデジャヴュだ。唯一の見所はレーマン、ハワードという両新顔キーパーがそれなりに活躍したこと。アーセナルのキャンベルのパートナーにコラ・トゥーレが入ったものの、危なっかしい。欠点はなにひとつ解消されていない。

(梅本洋一)

 

2003/08/05(tue)
トライネイションズ 第4戦 南アフリカ対オーストラリア

 

 

 2連敗で背水の陣のワラビーズ。共にオールブラックスに50点を献上したチーム同士の第2戦。ヨハネスバーグの第1戦ではスプリングボクスのシャローなディフェンスから、僅差の勝負の持ち込むという完全にスプリングボクスのゲームだった。あのタイトなディフェンスに打ち勝つために、エディ・ジョーンズはどんな作戦を立てるのか? スプリングボクスは、対オールブラックス戦から6人のメンバーを入れ替えたのに対し、ワラビーズは絶不調なのにもかかわらずメンバーの入れ替えはFBのバークをレイサムにしただけ。もちろんバークのキックは有効な戦術ではあったが、それ以上にフィールドプレイにおける彼の判断ミスが前の2戦で多かったのは事実。ワラビーズに作戦など無い。このゲームに臨むワラビーズに作戦など不要だ。全員が、このゲームの重要性を理解すれば、彼らが何をすればよいのは分かるだろう。
 事実、この夜のワラビーズは逃げない。スプリングボクス両センターの前に出る強烈なタックルにも腰を引かない。両フランカーも前に出て執拗にボールに絡み、スプリングボクスの唯一の作戦であるクーンのキックのチャージに出る。しのぎあいつぶし合う展開。ボールがワイドに展開されることはほとんどないが、局面での厳しさと激しさは今年のトライ・ネーションズでもっともハイレヴェルなものだ。一歩も引かない前半の展開は共に3PK同士の9対9。重苦しい肉弾戦がこれでもかこれでもかと繰り広げられる。
 そして後半。ワラビーズは一気にボールを展開し、開始2分でトライ(ゴール)。これでゲームの趨勢は決した。たとえばオールブラックスのロコココのような決定力を持たない両チームは、このようなラグビーを展開するしか方法はないだろうし、後半開始直後に一気に勝負をかけたワラビーズは、結果的に29-9で勝利を収める。ブリスベーンの観客たちは確かに喜び、これからの展開に希望を持たせたろうが、どちらもクリエイティヴィティを欠いたラグビー。力のラグビーのみがここにあり、確かにラグビーはメンタルなスポーツであることは証明された──「負けない」気持ちが強い方が勝つ──が、このラグビーでは何ゲームもこなさねばならないワールドカップではもたないだろう。スプリングボクスには展開力が、ワラビーズには、プラス・アルファを見せるための新たな戦術が絶対に必要だ。

(梅本洋一)

 

2003/07/29(tue)
トライネイションズ 第3戦 ニュージーランド対オーストラリア

 

 

 それにしてもオールブラックスは強い。1巡目のラストゲームに当たるこのアウェイのゲームで50対21でワラビーズを文字通り粉砕した。7トライ対3トライという差は、そのままスコアの差につながっている。このゲームでも快速左ウィングのロコココが3トライ、右のハウレット1トライと両ウィングで4トライを記録し、オールブラックスのラグビーがいかに健全なものかを示している。それに対して、ワラビーズの不調は目を覆うばかりだ。スプリングボクスに僅差で破れ、オールブラックスには完敗。2ヶ月後には自国単独開催のワールドカップが待っている。監督のエディ・ジョーンズはさぞ頭が痛いだろう。
 先回書いた世界ラグビーの地図──つまりイングランド、オールブラックス、フランスが第一グループ──は、このゲームでも正しいことが証明されてしまった。先回のワールドカップでボールのリサイクルを反復し、一点の乱れもないラグビーを展開したワラビーズが退潮し、ラグビーの転回期を迎えつつあるようだ。一線に並んだディフェンスに対して少ない人数でボールのリサイクルを続けるラグビーは行き詰まり、イングランドのような圧倒的なFWの力とSOのキックで勝っていくラグビー、フランスのようなFW、BK一体となってワイドに展開するラグビー、そしてオールブラックスのように、ある程度伝統的ではあるが、SOの展開力と両ウィングの決定力で勝負するラグビーが昨年の11 月からのテスト・マッチ・シリーズとこのトライ・ネーションズによって台頭しつつある。1999年には、モダン・ラグビーと言われていたワラビーズのラグビーが、その後全世界に影響を与え、スーパー12や日本の社会人まで模倣するものになったが、そのモダン・ラグビーのあまりの機械主義が、これほど短期間に覆されるとは誰が思ったことだろう。ボールのリサイクルには常に約束事がつきまとい3次攻撃まではパターン・プラクティスだとサントリーの土田がかつて語っていたが、たとえばスプリングボクスの強烈なディフェンスによって、あるいはオールブラックスのロコココの走りが、フランスの(まだ未完成な)フレアが「機械主義」と「約束事」を次々にうち破っていった。これはラグビーというスポーツにとって実に健全なことだ。スポーツとは勝者が常に勝者で終わるものではなく、新たな勝者が常に生まれ、次々と新たな創造によって更新されるものでなければならないし、それだからこそ、私たちスポーツ・ファンは、眠い目を擦りつつテレビのモニターの前に座り続ける。
 10月に開催されるワールドカップまでに望むことは、エディ・ジョーンズがワラビーズに新たな戦術を注ぎ込むことに成功し、旧来のワラビーズとは異なる創造性を見せてくれることだ。その萌芽がトライ・ネーションズの2巡目のゲームで垣間見えることを期待している。

(梅本洋一)

 

2003/07/22(tue)
トライネイションズ 第2戦 ニュージーランド対南アフリカ

 

 

 対ワラビーズ戦で見せた果敢なディフェンスにスプリングボクスの光明を見た前戦。だがこのゲームは圧倒的にオールブラックスの勝利。文字通りアルティメイトクラッシュだった。スコアは52対16。だがスプリングボクスのトライが試合終了間近だったわけで、実際は52対9。トライ数では7対1。スペンサーのキックが好調ならば、点差はもっとついたはずだ。
 オールブラックスの勝因は何か? これは対ワラビーズ戦の分析によるものだ。ワラビーズ戦でスプリングボクスのセンターを中心にしたディフェンスが強力なのを見たオールブラックスは、徹底して接近戦を試みる。ラック・サイド、モール・サイドに拘りを見せ、ボールのリテンションよりも常にボールを確保することを選択し、ゆっくりと攻めた。むやみにバックス勝負に出ず、伝統のオールブラックスの戦術をそのまま実行し、決定力のあるハーウッド、ロコココという両ウィング(共に2トライ)にボールが回ることには確実にトライラインを超えるラグビー。スプリングボクスは次第に焦りを見せ、ますますオールブラックスの術中にはまっていく。スプリングボクスの接点の強さも、このようにボールを支配されてはなんの意味もなくなる。本当にこのチームは強い。イングランドFWには完敗し、フランスの素早い攻撃に乱れは見せたが、オールブラックスは、わずか数週間でチームを立て直し、そして、適切なスカウティングをもとに次のゲームを組み立てることができる。勝つラグビー、それも圧倒的に勝つラグビーを実行したオールブラックスの力はやはり見直すべきだろう。
 対するスプリングボクスに攻めてはあったのか? この日のスプリングボクスは昨秋のヨーロッパ遠征でイングランドに大敗したチームのままだ。SOのキックで敵陣に行きたくとも、ボールが取れない。常にディフェンスに追われ、まったくボールを散らすことができない。強烈なタックルを持つ両センターも仕事のしどころがない。つまりこういうことだ。スプリングボクスの早いリズムのディフェンスにマッチする攻撃を持つチームなら、このチームは健闘できるが、リズムを敵に支配されると一方的に崩れてしまう。ワラビーズ戦の勝利は、スプリングボクスのチーム力の回復というよりも、ワラビーズの停滞こそを示しているようだ。イングランドは、この日のゲームが大いに参考になったはずだし、昨秋、相対しているイングランドFWにしてみれば、スプリングボクスのFWは、怖くないはずだ。とりあえずトライネーションズの興味は、次週、ワールドカップ開催国の代表であるワラビーズがチームをどこまで立て直してオールブラックスを苦しめることができるのか、という点に絞られた。もしオールブラックスが簡単に勝利を収めるなら、ワールドカップでも、スプリングボクスもワラビーズもノーチャンスということになる。イングランド、フランス、オールブラックスを第1グループに、アイルランド、南アフリカ、ワラビーズが第2グループということになるだろう。

(梅本洋一)

 

2003/07/14(mon)
トライネイションズ 第1戦 南アフリカ対オーストラリア

 

 

 イングランド、フランスの南半球遠征に引き続いてトライネイションズが開幕した。ラグビー・ファン以外になじみがないと思うので一言解説。トライ=3、つまり、ニュージーランド(オールブラックス)、オーストラリア(ワラビーズ)、南アフリカ(スプリングボクス)の南半球3強の対抗戦が毎年組まれている。今年はワールドカップ・イヤーのため、勝敗とは別の意味合いもこの大会にあるだろう。
 開幕戦はワラビーズ対スプリングボクス(於、ヨハネスブルグ)。共に北半球の南半球遠征に好成績を収められず、ワールドカップが心配な2チームの戦い。だが、見応え十分の1戦。何よりもスプリングボクスの突き刺さるディフェンスが、このゲームを締まったものにしてくれた。特に両センターはビッグヒットを繰り返し、ワラビーズのライン攻撃を文字通り寸断した。ラックのボールをリサイクルし続けるのが主流の現代ラグビーにあって、相手のセンターやウィングを仰向けに倒すタックルが連発されるラグビーを見たのは本当に久しぶりだ。ボールのリサイクルが生命線のワラビーズがスプリングボクスのタックルにまったくリサイクルを反復できず、ラックでは何度もターンオーヴァーされてしまう。アタック面では、クーンのキックと、ラッセルの快走のみという単調なもので、それほどのクリエイティヴィティはないのだが、とにかく「接点」での気迫と、「ビッグヒット」の連発は、ラグビーの原点を見た気がする。昨年の北半球遠征での惨敗続きや今年のテストマッチでのアルゼンチン戦での辛勝は、どこかに置き忘れ、ひたすら鋭いタックルを反復するスプリングボクスの選手たちに拍手を送りたい。最終的なスコアは26-22。ここでもラグビーは30点をめぐる攻防であることが証明されている。ディフェンスが頑張れば、トライはそう簡単に取れない。ディフェンスとルイ・クーンのキックに賭けたスプリングボクスのラグビーが今回は功を奏した。もちろん、毎回、こんなディフェンスができるわけはないだろう。連敗と辛勝のくりかえしがスプリングボクスのフィフティーンの魂に火を付けたのだろう。それに対してワラビーズはぎこちない。ここでもキャプテンのグレーガンをはじめ、「昔の名前」の連中が出場しているが、アタックは遅く、力勝負しかできない。このチームの下に位置するチームに、60点以上取られて負けるジャパンはいったい何を志向しているのか。「ナンバー」誌上で「これでいいのかラグビー日本代表」の小特集が組まれているが、どの論者の言うことも正しい。彼らに共通の「危機感」を私も共有するが、この「危機感」がないのは向井監督とジャパンのメンバーだけか。
 もしジャパンなどどうでもよいとすれば、このゲームでのスプリングボクスの健闘によって、ワールドカップの予選リーグに組まれているイングランド対南アフリカへの興味が増した。

(梅本洋一)

 

2003/07/14(mon)
女子W杯予選プレーオフ 日本VSメキシコ

 

 

 試合が始まってすぐに気が付くことだが、ボールとは逆サイドがこの試合ではぽっかりと空いてしまう。それは日本チームのなかに大きなロングキックを蹴れる選手がほとんどおらず、蹴れるとしても十分な予備動作を必要としてしまうところに理由がある。もしかしたらそれは、日本に限らず女子サッカー全体の共通点なのかもしれないが、とりあえずこの試合の両チームには基本的に大きく素早いサイドチェンジはない。
 すると当然ボールの周囲に密集して中途半端に浮いてしまう選手が出てくる。日本にも何度かそういったシーンが発生した。例えば右サイド川上が持つと、左サイド山本はどうしても中へ絞りながら中途半端なポジションに落ち着く。そのとき彼女はほぼゲームから消えている。
 そこでボランチによるボールの散らしが重要になってくる。その点での日本チームは非常にバランスが良い。ボランチ(たぶん2枚)はリズムよく左右にボールを散らすし、全体的にもワンタッチ、ツータッチでゲームは展開される。
ただし前半は「バランスの良さ」がこのチームのあだとなった。3-4-3布陣(選手登録を見る限りでは3-4-2-1だが)は常時崩れることなくパスは回るが、決定的なパスや走り込みがない。つまりシステムを「ブレイク」する動きがほとんどないのだ。それを期待される前線の澤穂希も前線に吸収される形で決定的な仕事をできない。確かに彼女は上下左右に動き回るが、それさえも円滑なパス回しの歯車にしかならなかった。
 しかし後半、どうやら3-4-2-1 となった(戻った?)日本はスペクタクルなサッカーを見せてくれる。ワントップの大谷が前線で幅広くボールをキープし2列目から澤がスペースへ飛び出す。澤は、ボールへの絡みを少なくすることで常に前を向いて決定的な「ブレイク」をすることとなる。ワントップは正解だ。ターゲットができたことで他の選手全員が前を向き始めたようだ。チーム全体に攻撃の意識が生まれ(メキシコ程度の相手ならそれが当然だ)局面での勝負が増えはじめる。前半はアーリークロス中心だった左サイドの山本も勝負の回数が増え、1点目はまさに彼女がディフェンダーふたりを抜いたおかげだ。左右に典型的なサイドアタッカーを擁するこのチームには、ワントップが合っているだろう。
 どうみても格下のメキシコ相手では確証できないが、幾つかの個性(ディフェンスの大野は非常に安定しているし、ボランチ小林のキックは正確かつ強烈、左サイド山本のドリブルはアレックスより効果的だ)、そして規律の深い浸透度を持つ日本女子チームは、大きく飛躍する可能性を秘めていると思う。あとは、ここぞというポイントでのダッシュや緩急の「急」が必要だろう。後半の澤のように、どこかで規律を「ブレイク」する勇気を持たねばならない。
 「女子サッカー」という枠などなくてもこのチームは魅力的だ。9月のW杯を楽しみにしていいだろう。

アウェ−初戦で約9万人の観衆(もちろんメキシコサポーターのみ)を向こうに2-2のドローに持ち込んだ日本チームは、この試合でW杯出場が決まる。

(松井宏)

 

2003/07/08(tue)
ラグビー イングランド対ジャパン 第2戦

 

 

 10月12日に開幕するワールドカップへのジャパンの壮行試合となったこのゲーム、至るところでこのチームの問題点が露呈している。前回も書いたことだが、イングランドAレヴェルのこのチームに9トライを献上するジャパンのディフェンスは、さっぱり改善されていない。ワイドに展開する「世界標準」に対してどうやってディフェンスするのか? 大畑は追いつかず、小野澤も交わされる。FBの栗原は常に不在。フランカー陣は、最初のアタックを止めるのが精一杯。これでは9トライは当たり前だ。改善策はないのか? 単純だが最善なのは、接点を強く! そして、確保したボールを大切にすること! この2点しかない。FWの体重差はわずか2キロしかない。それでも走り勝てないジャパン。素早いバックス・プレイが信条のジャパンが、ノックオンやスローフォワードを繰り返す。そしていちばんの問題は、ハーフ団のパスアウトが遅いことだ。SOがミラーならば苑部なのだろうが、苑部のモーションが大きく広瀬にパスが渡る頃はすでにディフェンス網が完全に整っている。広瀬にも大いに問題がある。判断が遅くラインを動かすことができない。その証拠に後半に月田がSHで登場するとパスが動き出す。もちろんゲームの趨勢が決まった後だったから月田も大変だったろう。このゲームを見る限り、苑田を選ぶ必要はない。
 この状態では、ワールドカップ予選プールで全敗は必死だ。どうする宿沢? 翌日のインタヴューでは、宿沢もワールドカップ・レヴェルにこのチームが到達していないことを認めている。処方箋はないのか。前述した基本的な接点とパスの問題以外に、このチームに必要なのはショック療法かもしれない。まず何よりも向井監督の解任。これはショックが大きいだろう。誰が監督でもワールドカップ予選プールで敗退が決定的なら、これも何度も書くが、監督は宿沢広朗しかいない。強化委員長自らが監督の職位を責任を持って引き継ぎ、三井住友銀行常務の職を投げ打って、自分の輝かしい業績に最後の花を咲かせたらどうか。そして、体重差には目をつぶろう。低いタックルと真摯なボールさばきのみで代表を選ぶ。胸から「リポンビタンD」の商標を外そう。地上波の中継でワンプレー毎にCMを入れる会社がこのチームを本気でサポートしているとは思えない。このゲームは大正製薬のものではないのだ。死の直前まで戦術に思いを巡らした大西鐵之祐の伝統を思い出すのは今しかないではないか。それをいちばん良く知っているのは宿沢だろう。そして岩淵、チームの窮状を救えるゲームメーカーはもう君しかしない。サイズはないが、ボールを動かし、細かなパスでスペースを見つけ、一気にトライに持ち込むしかジャパンの活路はない。

(梅本洋一)

 

2003/07/05(sat)
ラグビー イングランド対ジャパン 第1戦

 

 

 北半球の国々が夏の交流試合、そして南半球の最強3国(ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ)がトライネイションズを控え、その後に、ワールドカップに乗り込むのに対して、今まで4度開催されたワールドカップでまだ1勝しかしたことのない極東のラグビー小国には、本番ワールドカップまであと2ゲームしか準備ができない。その1ゲーム目がこの対イングランド戦だ。
 だが対イングランド戦といっても、イングランドは、オールブラックス、ワラビーズ(このサイトに書いたとおり連勝)戦を戦った最強メンバーではなく、彼らのバックアップをセレクションすべく組まれたチームによる来日だ。だから日本ラグビー黄金の日として記憶される1971年9月に来日したイングランド(6−3という素晴らしいゲームだった)とは異なって、先日やってきたオーストラリアAよりやや弱いと考えるのが適当だ。
 前半は、確かに気迫あふれるタックルと、大畑の快足で一時は10-3とリードを奪った。だが、ボール支配においては常に圧倒的にイングランドであり、ジャパンはたまにマイボールを得ても、ミス(ノックオンの山)やキックでまったく継続できない。大畑のトライにしても、ターンオーヴァーしたボールを相手バックス陣の背後にキックしたのを彼が拾ったものであって、継続の末、ゲットしたのものではない。イングランドは、北米遠征の帰路に立ち寄っただけで疲労の色がありあり伺え、カヴァーディフェンスに走る選手も少なかった。
 「スピードアタック」というジャパンのスローガン通り、前へ素早く走り込む姿はあったが、まったくコンビネーションがなく、ラインの方向とパスの制度が低くノックオンを繰り返す。ボールを得ても、キックのみの戦法が徹底されていて、前が空いていても、すぐに蹴る。ゲームを読み、ラインをリードするのは広瀬には無理なようだ。そして苑田のパスモーションが遅く、そして大きく、パスが広瀬か元木に渡ったときにはもうディフェンスの壁がしっかりと整理されている。斎藤祐也や伊藤剛臣の単独突破は所詮不可能だ。ディフェンスにしても個人の気迫のみでは限界がある。もっとシャローを徹底させない限り、どんなチームに当たっても最低限、このゲーム(35-10)程度の差で敗退することは目に見えている。

(梅本洋一)

 

2003/06/30(mon)
テストマッチ・シリーズ (3)
フランス対オールブラックス

 

 

 イングランド対オールブラックスと並んで6月テストマッチ・シリーズでもっとも注目すべき1戦。オールブラックスはいくつかのテストを繰り返しながら、現在のベストメンバーを組み、フランスはニュージーランドに渡る前に対アルゼンチン戦の2テストを2連敗。ラグビー大国に渡る前のアルゼンチン戦、フランスは常に分が悪いようだ。このゲームもベストメンバーで望むと思いきや、なんとFWからロックの2人(ブルーズ、ブルゼ)と不動のフランカー2人(ベッセン、マーニュ)を外し、7月4日に発表されるワールドカップ・メンバーのテストゲームと位置づけているようだ。この面子ではオールブラックスの大勝だろうと思われた。
 確かに前半は、最初こそ、フランスがボールを繋いで攻め込みミシャラクのDGで3点差としたが、それ以後は、オールブラックスの若いウィング、ロコココのワンマンショー。3連続トライだ。もちろんロコココの快速を誉めるべきだろうが、SOのスペンサーのパスワークとディアゴナルな走りが、フランスのディフェンス網を翻弄した。ラック・サイドを抜く走りを見ているとマーニュ、ベッセンの不在が響く。アリノルドキを6番で起用したが、彼にはディフェンスによるスピードがない。だが、フランスに負傷者が出て、まずドゥヴィリエが入り、スクラムが安定し、アリノルドキが退き、ハードタックラーのセバスティアン・シャバルが入ると、流れは一気にフランス。若いFW陣が繋ごうとしても、いざタックルを浴びると、接点の強さはオールブラックス。シャバル、ドゥヴィリエの接点での強さと、ボールへの絡みがゲームを停滞させる。前半は19対13で終了。
 前半20分からはフランスも攻勢を見せたが、トライユとミシャラクのキックでボールの継続が途切れ、自慢のライン攻撃を見せる機会が少なすぎた。
 そして後半、いきなりシャバルが猛タックル見舞い、ゲームが開始される。ほぼ互角の展開で後半15分まで両チーム無得点。この後、オールブラックスは広い展開禁じたように、モール。まるで昔のオールブラックスを見るようだ。ゆっくりとしたリズムでボールを支配し、フランスはオフサイドを反復して4PGを献上。この日、センターに入ったジョジオンの1トライに押さえられる。ゲームは31対23で終了。
 確かにこのゲームは、一方でトライ・ネーションズへの準備ゲーム。他方でワールドカップ・メンバーの選抜試合という意味合いがあって、多くのテストが行われた限り、結果が力の差とは言えないだろう。特にフランスは最後まで最高のフランカー2人を温存しきった。繋ぎに、パスに、ディフェンスにフランスのキーマン2人を使わずにゲームを終えて、PKさえなければほぼ互角にゲームを終えたことは大いに期待できることだ。特にミシャラクはディフェンス、オフェンスで活躍したと思う。やはりガルティエ、ミシャラクのハーフ団はフランスではいちばん良いだろう。

(梅本洋一)