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2006年06月21日

イングランドの実験

 2連勝して予選リーグ突破を決めているチームは、モティヴェーションを保つことに難しいが、一方で、3ゲーム目は決勝トーナメントを控えての実験の場ともなりうる。

 ドイツは、ホームのため、3ゲーム目も勝利を義務づけられていた。ベストメンバーでエクアドルを攻め、3-0の快勝。開始直後はドイツの堅さが目立ったが、1点先行すると一気にアタック。これまた予選リーグ突破を決定しているエクアドルはファイティング・ポーズをとるのをやめた。

 38年間無勝利というレッテルで開始されたイングランド対スウェーデン。エリクソンは、そんなレッテルに拘らず多様な実験を試みた。もっとも最初の実験であるルーニー、オーウェンの2トップ、イエローを一枚貰っているジェラードをベンチに置き、ハーグリーヴズの起用は、開始4分のオーウェンの怪我で変更を余儀なくされ、すぐにクラウチを起用。点は取れなかったもののルーニーも徐々にその動きにキレが戻っているようだ。

 次の実験は、ルーニーとジェラードの交代。この交代にはジョー・コールの調子の良さが伏線になっている。アシュリーの無駄走り──このゲームでもジョーからアシュリーに有効なパスは出ていない──がジョーのスペースを作ることになり、そこでジョーの長所が全面的に開花する。つまりアシュリーのオーヴァーラップによって、相手のディフェンス・ラインとジョーの間に生まれたスペースを利用してジョーは得意のドゥリブルで仕掛けていく。そしてジョーの見事なシュートでイングランドに先取点が生まれた。

 おそらくエリクソンの頭にはなかったろうが、絶好調のジョーを見て、アシュリーは後半に別の実験を試みる。ルーニー・アウト、ジェラード・イン。トップにクラウチを残し、4-1-4-1。チェコみたい! クラウチの下には、左にジョー、右にベッカム、中央にジェラードとランパード、彼らの背後にハーグリーヴズ。この布陣は魅力的だ。右からは正確なクロス、左からは必殺のドゥリブル。中央からはミドル。クラウチの頭から落ちたボールを拾いまくる。

 事実、同点にされた後半、イングランドの2点目は、右に流れたジョーのクロスがクラウチの頭を越え、その向こう側にポジショニングしたジェラードの頭にピンポイント。クラウチ、ルーニーでは限られていたオータニティヴが、4-1-4-1にしたとたん数倍にふくれあがった。ジョーとベッカムは自在にポジション・チェンジする。ヴァイタルエリアで実にクリエイティヴなアタックが展開された。

 結局、終了間際にラーションの執念によって2-2のドローに終わったが、勝敗が大きな重要性を占めないこのゲームでのエリクソンの実験は多彩で興味深いものだった。イングランドも卓越したアタッカーを持たないが、もっとも誇れる中盤での選択肢が確実に増えていった。

 これから開始されるオランダ対アルゼンチンではどんな実験が待っているのだろう。1位抜けでも2位抜けでもよいのなら、このゲームでも思いつかない実験が行われることを期待している。

投稿者 nobodymag : 2006年06月21日 22:23