« There is always tomorrow:ワラビーズ対ジャパン 91-3 | メイン | Once Upon a Time in Toulouse : ジャパン対フィジー 31-35 »
2007年09月11日
Déjà vu:インターミッション
まだ少しばかり残っているとはいえ、ほぼすべてのチームが1ゲームずつ消化した。以前のW杯ならば、盛り上がったのだが、今回に関してはどうもゲームが面白くない。もちろん開幕戦を除いて対戦カードがつまらないこともあるが、ラグビーの新たなページがまったくめくられていないように思えるからだ。
有望チームの多くが似たようなスタイルで戦っていることがその大きな原因だろう。第1回大会のオールブラックスのモールとか、第4回大会のワラビーズのボールのリサイクルとか、第5回大会のウェールズのパスプレイなど、チームの特色を活かしたスタイルがなく、SOがキックで陣地を取り、相手陣に入ってから勝負するというのはどのチームにも共通するやり方のようだ。アルゼンチンが対フランス戦に採用した徹底したキックとハイパントを除いて、これでは単に強い方が勝つとしか言いようがない。かつてラグビーは「スタイルの戦い」であって、フランス語ではguerre de stylesと翻訳され、劣勢のチームが大きくてスキルのあるチームを倒すべく、新たなスタイルを産み出すことに専心したはずだ。ラグビーが国際化し、交流が盛んになると、手の内を隠すことが難しくなるし、互いのスタイルについての研究が進むので、差異がそぎ落とされ、同一性ばかりが目立つようになる。とすれば、単に大きくてスキルのあるチームが勝利を収めることになり、日本を初めとする弱小国はまったく勝利が望めなくなる。
そんな中で、前半をカナダにリードされたウェールズは、尻に火が点いたせいか、SOをフックからジョーンズに代えた。するとラインが動き出し、チームにリズムが生まれ、まるで蘇生手術成功のようにチームが甦った。同一性ばかりが目に付いたチーム──それだけでウェールズはカナダを上回れない──に差異が生まれ、チーム自体が03年のW杯を思い出したように活性化してきた。すでに書いたが、アルゼンチンはフランスを封じるために、徹底してキックを使い、フランスの推進力を削ぐことで、戦いをFW周辺に限定させて勝利を手にした。「もう忘れてつぎの戦いに備えよう」とラポルトは語るが、就任当初こそ、ロングパスによる大外展開、ディアゴナルなキックパス等、新たなスタイルに手をつけたが、結局は、iインターナショナル・スタンダードのラグビーに回帰したフランス。フレアの影も見えない。
JKが就任してからジャパンには「武士道」精神が根付いたかも知れないが、「新たなラグビー」はさっぱり見えてこない。フィジーやカナダに対して、単に大きくて強い者が勝つという戦法をとるのだろう。「2軍」が出場した対ワラビーズ戦は、何の工夫もなかった。朽木は新聞に「哀しい」と書いたが、ぼくが、これでは特攻隊と同じだ、と書いたのと似たようなことだろう。
すでに戦術的な「隠し球」は許されない時代になり、それぞれのチームのコーチたちも戦術の創出よりは、言葉の正しい意味でセレクショナーになり、手持ちtの選手たちの選択のみで頭が一杯なようだ。あとはゲームの中で選手たちが、自らの方法を産み出し、結果的に、そのラグビーはかつて見たこともないようなものであることを祈るだけだ。
投稿者 nobodymag : 2007年09月11日 21:40