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2007年09月23日

The Big White Ten:イングランド対サモア 44-22

スプリングボクス対イングランド戦についての文章の最後に、今のイングランドに処方箋はない、と書いたが誤りだった。たったひとつだけ処方箋があった。カンフル剤などというものではない。この薬を投薬すれば、チーム全体が甦るばかりか、惨敗を勝利に変えることができる。その魔法の薬は、ジョニー・ウィルキンソン。
 トンガに敗れたサモアもこのゲームに負ければ、ベスト8の望みは絶たれる。だから彼らにとってもベストのゲームで、一番の力をぶつけてきた。だから好ゲームになった。紙一重のパスを通し、走りまくった。イングランドはディフェンス一方。だが、後半の一時期を除いて、負ける気はしなかったろう。結局ファンタスティックなラグビーは展開できたが、サモアは一瞬もリードを奪えず、終わってみればダブルスコアの敗戦。トライ数も1-4。数字は完敗と示している。だが、ここにも魔法の薬の秘密が隠されている。ゲームはほとんどイーヴンに見えた。イングランドもしてもこのゲームに負ければ予選リーグで姿を消すことになるから、絶対に負けられない。渾身のディフェンスで、寄せては返す波にも似たサモアのアタックを受け止める。だが、大丈夫なのだ。スプリングボクス戦ではチーム全体がみるみる崩壊していくのが分かったが、このゲームは、とにかくディフェンスを一生懸命やれば勝てる。ウィルコの存在はそのくらいに大きい。
 スタッツもそれを示している。コンヴァージョン3(6点)、PG4(12点)、DG2(6点)、総計24点が彼のゴールデンブーツからたたき出されている。つまり、ウィルコがいなかったら、このゲームは2点差でイングランドの負けだ。しかもウィルコは、本当に久しぶりのゲームで、コンヴァージョンを1本とPGを2本失敗しているから、彼が完調なら、あと8点を稼げていたろう。じっくり攻めていれば、いずれPGのチャンスが回ってきてウィルコの左足から放たれたボールがゴールポストの間を通過する。それを待てばいい。あのぜんぜん面白くないラグビーがまた始まったのだ。どうやってトライを取るのかと命を削って考え、手練手管を繰り出す必要はない。ゴドーを待つ忍耐力があれば、このチームには必ずゴドーはやってくる。

 対トンガ戦にBチーム仕様でスタートしたスプリングボクスは冷や汗をかいた。サモアを敗り、勢いに乗るトンガは、ガンガン来るから、Bチーム仕様では、いくらスプリングボクスとは言え、追いつめられてしまった。焦ってAチームの面子を後半店晒しにしたが、準備が十分ではなく、ゲームにうまく入っていけなかった。やっと勝つには勝ったが5点差の辛勝。ラグビーとは気青でやるものだ。PNCのとき、このトンガに勝ち、サモアに良い勝負をしたのがジャパンだった。そのジャパンが、トンガが僅差の勝負をしたスプリングボクスやファンタスティックなラグビーを見せてくれたサモアが負けたイングランドよりも「格下」のウェールズに大敗している。

投稿者 nobodymag : 2007年09月23日 01:28

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