佐藤央監督作『MISSING』、
LOADSHOW配信
監督・佐藤央×脚本・小出豊
『MISSING』をめぐる対話

映画配信サイト「LOADSHOW」にて6月6日より、佐藤央監督作『MISSING』の配信がスタートする。数少ない上映にもかかわらず方々で話題を集めてきた本作の配信に合わせて、今回、2011年8月に神戸映画資料館にて行われた佐藤央(監督)と小出豊(脚本)両氏による『MISSING』をめぐるクロストークを特別掲載させていただいた。一本の映画の成り立ちから現場における演出までを丹念に辿ると同時に、数多くの映画の記憶とともに本作について語る彼らの言葉からは、現在でも色褪せることのない、映画(づくり)を考える私たちの思考を刺激するさまざまなアイデアと問題を読み取ることができるだろう。本テクストが今作をこれから見る、あるいは再見する人々の一助となれば幸いだ。

欲望を抱いた人間を撮る

佐藤央2010年の夏前頃だったか、神戸映画資料館さんから映画を一本撮ってほしいというお話をいただいたことがきっかけで、この『MISSING』の企画がはじまりました。その段階で僕のなかで決まっていたことは、小出さんに脚本をお願いするということだけでした。というのは、小出さんとは普段から親しく付き合わせてもらっていて、日々のやり取りのなかで、それぞれの映画観とでもいうようなものに刺激を受け合って自分の考えを更新していけるという信頼関係がすでにできていたことがひとつ。もうひとつは、小出さんの映画を見た方なら一目瞭然だと思うのですが、小出さんの映画のなかにつねにある、画面に刻み込まれた核としたテーマと言うのか、ごつごつとした垂直的なものがありまして、うまく言えませんが、小出さんが持っているそういったものを自分が撮る映画にミックスさせれば面白いものができるんじゃないかな、と思ったからなんです。当初僕が持っていたアイデアと言えばそれくらいのもので、実際の制作にあたってはゼロからこの映画をどのようにするかというところから話していきましたよね。脚本の出発点って何でしたっけ?

小出豊僕が以前から考えていた強い欲望をもった人物同士の関係を書きたいという提案を佐藤くんが快く受け入れてくれたのがはじまりでした。

続き

佐藤央(さとう・ひさし)

1978年生まれ。映画監督。法政大学卒業後、映画美学校フィクション・コース修了。『キャメラマン 玉井正夫』(2005)、『シャーリーの好色人生』(2008)などを監督。その他の監督作に「結婚学入門」シリーズ(2009、10)や、『MOANIN`』(2010)、『3.11 明日』(2011)のうちの一篇「2011/1945」、ハロルド・ピンターの戯曲「背信」のリハーサル風景を撮影した『Talkee-talkee』(2011)などがある。

小出豊(こいで・ゆたか)

1974年生まれ。映画監督、映画批評誌「シネ砦」団員。 映画美学校フィクション・コース修了。万田邦敏監督に指事し、『接吻』(2008)ではスクリプターを担当したほか、同監督の短編 TVドラマ『県境』(2007)、『一日限りのデート』(2008)では脚本も担当 。『お城が見える』で第4回CO2エキシビジョン・オープンコンペ部門優秀賞を受賞し、CO2エキシビジョン助成作品にして初長編『こんなに暗い夜』(2010)が大きな話題を集めた。同作はその後再編集されており、再上映の機会が待たれる。nobody本誌にて映画時評「○○のすべてを○○するために」を連載中。

『MISSING』(2011年/55分)

あらすじ:一人息子の失踪の原因が自分にあると、自らを責めている清瀬晧子は、5年の月日が過ぎ ても息子の帰りを待ち続けている。そこに、物事の「因果」について狂信的に語る女と、息子のかつ ての同級生が現れる……。

監督・編集:佐藤央
脚本:小出豊
撮影・照明:四宮秀俊
製作:神戸映画資料館
出演:土田愛恵、きく夏海、信國輝彦、昌本あつむ、八尾寛将、堀尾貞治