最新作『リアル~完全なる首長竜の日~』黒沢清 インタヴュー

黒沢清監督の劇場公開長編として約5年振りとなる『リアル~完全なる首長竜の日~』は、これまで黒沢清の映画に親しんだ人々にとってだけではなく、本作で初めて黒沢清の映画に触れる人々に対しても、鮮烈な驚きと戸惑いを突きつけるフィルムだ。映画の複雑さと単純さを同時に思考する、「人の心の中」を撮影することの方法論を問う、野蛮な最新作の秘密をめぐって、黒沢監督に話を伺った。
※本インタヴューの全文は6月発売予定「nobody issue 39」掲載予定です、乞うご期待!

――黒沢監督の最新作『リアル~完全なる首長竜の日~』(以下、『リアル』)には、乾緑郎さんの原作『完全なる首長竜の日』から持ち込まれた、「センシング」と呼ばれる技術によって他者の心の中に人が入り込むという設定があります。「映画では人の心の中を撮ることはできない」という監督ご自身の言葉を何度も耳にしてきた者にとって、今作はほとんど前言撤回のような驚くべき試みであるように思われました。

黒沢ご存知のように『トウキョウソナタ』(08)以来、いくつか企画を進めてはいたんですが劇場用映画はひとつも実現していない。そんな中で、東宝で公開される大きな企画としてこの原作を頂き、これをやらずしてどうするとは思いました。が、これは厄介だなと。人の心の中を撮ったという映画はなかなかうまくいかないなあと。僕も同じ目にあってしまうかもと危惧しながら、しかし心の中を撮るにはこう撮ればいいというものを自分で編み出してみようと、こんな無茶なことに挑んでしまったわけです。

続き

黒沢清(くろさわ・きよし)

1955年生まれ。映画監督。東京藝術大学大学院映像研究科教授。 立教大学在学中より8ミリ映画の自主制作を手がけ、1983年『神田川淫乱戦争』で商業映画デビュー。97年『CURE キュア』が国内外で大きな注目を浴び、2001年『回路』がカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で国際批評家連名賞を受賞、2008年は『トウキョウソナタ』が同部門で審査員賞を受賞。2012年、WOWOW製作による連続TVドラマ作品『贖罪』が、第63回ヴェネツィア国際映画祭に特別招待作品として上映された。同作は現在フランスで公開中。

©2013『リアル~完全なる首長竜の日~』製作委員会

『リアル~完全なる首長竜の日~』

2013年/127分/ヴィスタ/カラー
監督:黒沢清
原作:乾緑郎『完全なる首長竜の日』(宝島社刊)
脚本:黒沢清、田中幸子
撮影:芦澤明子
出演:佐藤健、綾瀬はるか、オダギリジョー、染谷翔太、
堀部圭亮、松重豊、小泉今日子、中谷美紀
6月1日(土)全国東宝系にて公開
http://www.real-kubinagaryu.jp/index.html