『建築と日常』編集者日記

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『建築と日常』編集者日記
最終更新: 9年 40週前

2014-05-03

金, 05/02/2014 - 15:00
最近DVDで観た映画。ウィリアム・フリードキン『エクソシスト ディレクターズ・カット版』(1973/2000)、ダリオ・アルジェント『サスペリア』(1977)。どちらも『映画空間400選』(INAX出版、2011)選出作品。ホラー映画なので空間性が強調される。ただ『サスペリア』は映画としての様式美みたいなものを強く感じて、今ひとつ馴染めなかった。それに比べると『エクソシスト』はわりと現代的でリアリスティックで、例の講義のために最近詰め込んでいる西洋建築史の世界観とも響いてくるものがあった。 『映画空 ...

2014-04-30

火, 04/29/2014 - 15:00
2013年の4月30日に刊行した別冊『多木浩二と建築』が今日で刊行1周年となりました。それ以前の『建築と日常』や別冊『窓の観察』よりも歴史的な地平を意識して作った本ですが、多くのご高評をいただき、あらためて手応えを感じています。まだ読んでいない方はぜひお手に取ってみてください。 別冊『多木浩二と建築』 http://kentikutonitijou.web.fc2.com/taki.html 知の巨人の知られざる一断面。多木浩二の建築分野での活動を振り返り、その仕事を歴史に開く。1000件を超える詳 ...

2014-04-28

日, 04/27/2014 - 15:00
昨日書いたことと関連して。岡谷公二『郵便配達夫シュヴァルの理想宮』(作品社、1992)では、シュヴァルの創作の価値を「おのれの生の欲求だけに従うこと」(p.243)に見ていた。「彼らは、この日常の現実が生きるに価しないならば、敢然として、もうひとつの現実──その中でなら彼らが真に生きることのできる、この現実以上の密度と強度と鮮やかな色彩と輝きとを持つもうひとつの現実を、わが手で作り出そうとする」(p.237)。そしてそうであったからこそ、むしろ(現代芸術においては失われた)「民衆の感性と想像力の土壌の ...

2014-04-27

土, 04/26/2014 - 15:00
岡谷公二『郵便配達夫シュヴァルの理想宮』(作品社、1992)を読んだ。例の講義の課題図書の1冊にあげているので(3月27日)、出題者として読まないわけにはいかない。たまたま初回の講義で紹介したT・S・エリオットの「伝統と個人の才能」(1919)が、本の最後の章で引き合いに出されていた。以下の部分を引用し(実際の引用文は吉田健一訳)、それと対比的に、シュヴァルおよび著者の関心対象であるアンリ・ルソー、レーモン・ルーセルが論じられている。

2014-04-25

木, 04/24/2014 - 15:00
テレビで放映していた、マーク・ウェブ『アメイジング・スパイダーマン』(2012)を観た。テレビ用に吹き替えだったりCMを挟んでいたりしたせいもあったかもしれないけど、それほどひどいというわけではないにしても、なんとなく全体として散漫な印象を受けた。サム・ライミ版のほうが全一的な作品世界がかたちづくられている感じがする。ストーリーはかなり重なるところもあるので、すでに世間で一定の評価を獲得したサム・ライミ版との差異を出すために、物語の要素を断片化して再構成するような作り方がされたのだろうか(内側から膨ら ...

2014-04-23

火, 04/22/2014 - 15:00
昨日は銀座でムーミン展を観たあと、京橋でLIXILギャラリーの「ブルーノ・タウトの工芸‐ニッポンに遺したデザイン‐ 展」に寄りつつ、上野の東京芸大で開かれた特別講演会、今福龍太×多木陽介×伊藤俊治「「映像の歴史哲学」─「オリンピア」から「プロヴォーク」まで、多木浩二の映像文化論─」に足を運んだ。あらかじめある程度の段取りが決められていたらしく、三氏で即興的に議論が交わされるというより、伊藤氏の司会を介して今福氏と多木氏がそれぞれ長めの発言をしていくという格好だった。 会場には昨日上海の篠原一男展のオー ...

2014-04-22

月, 04/21/2014 - 15:00
トーベ・ヤンソン生誕100周年記念「MOOMIN!ムーミン展」を松屋銀座のイベントスクエアで観た(〜5/6)。平日にもかかわらず会場は大勢の人で混雑していた。メインは「日本初公開作品約150点を含む約200点のオリジナル原画」ということだったのだけど、ヤンソンのモノクロのインク画は、言ってみれば印刷媒体でいかに有効に作品世界を表現するかを考えて編みだされた手法だろうから、原画を見たからといって、本の挿絵と比べてそれほど特別な印象がもたらされるわけではない気がする。混んでいなければまだしも、生誕100 ...

2014-04-19

金, 04/18/2014 - 15:00
芝浦工業大学で八束はじめさんの退任記念講義を聴いた。「Retrospective 八束はじめ 1967-2013」という題目で、大学入学以降のご自身の足跡を、学生時代/建築家時代/教員時代の3期に分けて語られた。僕としては、そうした歩みを踏まえた上での、その集大成となるような建築なり都市なりの考えをうかがってみたかった気もするけれど、これはこれで八束さんらしさを感じさせる興味深い最終講義だった。 とりわけ特徴的だったのは、最後の教員時代についてのパートだと思う。八束さん自身の活動を軸にするのではなく、 ...

2014-04-15

月, 04/14/2014 - 15:00
例の講義の初回。緊張感を保ちながら慣れていくこと。積極的に領域を拡張していくように努めること。 講義の最後、初回のテーマに則して、学生たちに「なぜ歴史を学ぶのか?」というタイトルで短い文を提出してもらった。内容はともかく、なにかの執筆を依頼して、こうして間髪入れずにたくさんの文章が手元に集まってくるという体験が新鮮だった。

2014-04-12

金, 04/11/2014 - 15:00
500円のDVDを買って、D・W・グリフィス『イントレランス』(1916)を観た。YouTubeにアップされているもののほうが画質が圧倒的によいという不条理。バビロンのシーンを例の講義で使えないかと思って確認してみたのだけど、それ以前に、4つの時代の物語を重ね合わせて描いていく手つきが興味深い。こうした手法の前提となっている歴史認識、時空間の認識は、美術や文学など当時の他のジャンルとの同時代性も指摘できるのだろうか。 とはいえ、なにより強く印象づけられるのは、100年前の人々がカメラの前で動き、演技を ...

2014-04-11

木, 04/10/2014 - 15:00
例の講義の準備で、学生の頃に訪れた開智学校(1876)や中込学校(1875)の写真を引っぱり出す。日本の大工が見よう見まねでつくった擬洋風の建築は様式的にちぐはぐで洗練されていないかもしれない、しかし洗練や完成度といった既存の評価軸の枠内でつくられる作品よりも、往々にして自明の価値体系とは無縁なところで闇雲につくられる作品のほうが人々の人生に響いてくる、ということを講義で言おうかと思った。 たしかゴダールに「処女作はその人のそれまでの人生すべてがかけられる」というような言葉があった気がするけど(気が ...

2014-04-07

日, 04/06/2014 - 15:00
別冊『窓の観察』で短編小説をご寄稿いただいた柴崎友香さんが、下記のイベントに参加されるそうです。 空間の描き方−建築家と小説家の対話− 島田陽×柴崎友香×山崎泰寛 日時:2014年4月25日(金)19:00〜21:00 会場:近鉄堂島ビル13階 大阪市北区堂島2-2-2 参加費:無料 ※申込期限:4月20日(日) http://www.a-proj.jp/event_news.html 残念ながら私は伺えませんが、会場のご近所の書店・柳々堂さんが出張して、『窓の観察』その他を販売してくださるこ ...

2014-04-05

金, 04/04/2014 - 15:00
最近観た映画。スタンリー・キューブリック『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(1964)と『時計じかけのオレンジ』(1971)をVHSで。ベルナルド・ベルトルッチ『殺し』(1962)と『ベルトルッチの分身』(1968)をDVDで。それぞれの監督の作品同士で、ほとんど同時代という感じがしない。 キューブリックのビデオは学生時代に買ったもので、当時は『時計じかけのオレンジ』が圧倒的だと感じていたはずだけど、いま観ると『博士の異常な愛情』のほうがよい。やはり ...

2014-04-04

木, 04/03/2014 - 15:00
某所で建築教育関連の座談会に立ち会った(文字起こしの仕事)。これまで自分とは縁遠い分野だと思っていたけれど、ここしばらく例の講義のことを考えている関係で、響いてくるところが多かった。教育の制度面のことはともかく、現場レベルの思考は、編集の仕事で他者と向き合うのと通底するように思う。