10/9「繰り返す時間、流れ去る時間」

斗内秀和
結城秀勇

  今日も泊まるが、明日は帰るだけになるので実質最終日だ。
 『キムズ・ビデオ』。キムズ・ビデオというビデオレンタル店が廃業後にどうなったかというのを映画オタクが探る。マフィアまで出てきてほとんど探偵映画のようになっていく。会場がとてもいい雰囲気でキムさんの「ゴダールは神様だから許すよ」と言うところはみんな笑っていた。個人的にVHSに只ならぬ思い入れがあることは自覚しているが、あまり関係がなかった。
 『富山村の御神楽祭り』。個人的にまったりとしてしまって完全に寝てしまう。体力も限界なので途中で出る。
 『あの島』。映画のある一場面のようなものが延々と繰り返される。音楽までずっとリフレインされていたのが印象的だった。個人の内側にあるものを見たという感触があった。
 『ターミナル』。グスタボ・フォンタンを強く勧められたので時間がきつかったがなんとか見た。バスターミナルに靄がかかったような映像が映って、音はリバーブしていたように覚えている。時折、誰のものか分からないが思い出のようなものがぽつぽつりとヴォイスオーヴァーで語られる。郷愁のようなものを強く感じさせられた。画面を見ていると夢の中のようであまりに心地良かったのでうつろうつろとしながら見た。
 『ゆきははなである:新野の雪まつり』。映画から少し離れるが、映画祭も終盤だからなのか、みんなでテレビを囲んで見ているような雰囲気があって見ているだけで心地良かった。2時間に渡って延々と祭りの紹介が続くが、いつまでも見ていられるくらいゆったりと作られている。
 最後に『言葉の力』、『火の娘たち』も見たがあまり言葉が出てこない。最後にあるクリス・フジワラの解説がとても面白かった。
 終わってから香味庵で飲んだ。クリス・マルケルの年になんとなく行っての2回目。仮眠を取ったら映画を見る夢を見てそれが面白かった。(斗内秀和)前日へ

  蕎麦処みねたで昼食、肉中華+ミニ丼セット950円はお得。せいろ系を頼むと自分ですりおろすわさびがついてくるし、山形名物牛だしの普通の中華そばもオススメ、地元で愛される名店。
 そしてジャン・モンチー取材。作品を分割する、二十四節気と西暦のふたつの日付の表記は、季節の移り変わりとともに循環する時間と、世界共通のパンデミックの記憶と結びついた時間という、二重化した時間を示しているとのこと。通訳の秋山さん、撮影の佐藤さんとともに、フレンドリーな空気の中でのインタビュー。オフィシャルサイトにて公開予定。
 香味庵にて、朝10:00から上映されていた『キムズ・ビデオ』デイヴィッド・レッドモン、アシュレイ・セイビンへの熱いコメントを複数聞く。この映画が届くべき人たちに届いたような感じは、今年のセレクション一番の手応え。こんな窮屈な「ルールを守りましょう」社会には「キムズ・ビデオ」が必要だ!(結城秀勇)前日へ翌日へ