濱口竜介 interview

濱口竜介監督のレトロスペクティヴが開催される。まだ1本も劇場公開作を持たない映画作家の「レトロスペクティヴ」とはいえ、しかしそれは必然の出来事として観客に迎えられるだろう。はっきり言いましょう。ここ1~2年の彼の作品群は、とんでもない驚きと喜びをわたしたちにもたらしている。今年のロカルノ国際映画祭でも上映される『なみのおと』、希有な実験の果実である『親密さ』(今回は初めてロングヴァージョンも上映される!)。現在進行形の濱口監督の思考と、その実践とは、さていかに?

――このたびのオーディトリウムでの特集上映「濱口竜介レトロスペクティヴ ハマグチ!ハマグチ!ハマグチ!」が開催されることになった経緯からお話を伺えますか?

濱口そもそもは(東京藝大)大学院の先輩でもあるオーディトリウム渋谷のプログラム・ディレクター、杉原永純さんに「そろそろ作品溜まってるでしょ、特集上映やりませんか」と去年の夏くらいから言われていたんです。でもなかなか踏ん切りがつかなくかったんですけど、同じ時期にインディペンデント映画配信サイト「LOAD SHOW」を企画している岡本英之くんも杉原さんと連絡を取っていて、ある日「全部つながったよ」って言われたんですね。「LOAD SHOW」でネット配信をする機会とこのレトロスペクティヴを、ひとつの流れとしてやれたら面白いんじゃないかと提案されました。オーディトリウム渋谷っていう映画館は今、何か面白いことをやってやろうっていう映画館じゃないですか。ひとりだと心許ないんですが、応援もあるし、今までの上映形態にこだわらずにやってくれるということであれば、やはり作品上映の機会がないことをスタッフやキャストにも申し訳なく思う気持ちもあったので、よし、やろうと肚をくくりました。

続き

濱口竜介 レトロスペクティヴ

これまで上映機会が極めて限られてきた濱口竜介作品──最新作『親密さ』から『何食わぬ顔』幻の“long version”初公開まで、その全体像が明らかとなるレトロスペクティヴ。
日時:2012年7月28日(土)~8月10日(金)
会場:オーディトリウム渋谷
公式HP http://www.hamaguchix3.com/

濱口竜介(はまぐち・りゅうすけ) 

1978年、神奈川県生まれ。映画監督。 東京大学文学部を卒業後、映画の助監督やテレビ番組のADを経て、東京藝術大学大学院映像研究科に入学。2008年、修了制作の『PASSION』が国内外の映画祭で高い評価を得る。その後も日韓共同製作作品『THE DEPTHS』(2010)、東日本大震災の被災者へのインタヴューからなる映画『なみのおと』(2011/共同監督:酒井耕)、4時間を越える長編『親密さ』(2012)を監督。精力的に新作を発表し続けている。