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December 03, 2004
『ライフ・イズ・コメディ』スティーヴン・ホプキンス
[ cinema]
天才的なコメディ・アクターには、常人には考えられないような傲慢さや強欲さがあり、一方で、自ら築き上げたキャリアに対する自省や、世間からのイメージと自分の理想とのギャップに悩み、俳優に対しての真摯な態度をもつ。ピーター・セラーズの、そんな、矛盾にみちた私生活と輝かしい功績が表裏一体に存在する役者の半生をみつめかえすと、人々は彼を愛してやまない。
グーン・ショウという、ジョン・レノンにも影響を与えたとされるイギリスの伝説的なラジオ番組で、ギャグや物まねを披露するコメディアンとしてスターだったピーター・セラーズは、母親の後押しで映画俳優としてのキャリアをスタートする。そんな出自をもち、『博士の異常な愛情』で有名な1人3役のような複数役を幾度もこなし、また、ピンク・パンサーシリーズのクルーゾー警部で60年代にコメディ映画のスターになったセラーズは、しかしながら、リハーサル通りの同じ演技が決してできなかったとも言われる。それまでの俳優という概念から離れ、即興やものまねなどのコメディアンの資質で乗り切った、まさに天才的な役者として疑いようがないのだろう。
そして、この『ピーター・セラーズの愛し方』と題された伝記映画は、その邦題が的確に表すようにピーター・セラーズという人物についての愛し方を理解させてくれる。いまとなっては真実かどうか確かめようのない数々の異常な逸話や、いつまでも我が儘な子供のように振る舞うピーター・セラーズ。そうしたシーンが幾度となく映し出される。但し、この作品ではそうしたセラーズに対する否定的な要素でさえ、彼がなぜスターとして成功することができたのかという問いへの回答として肯定的に描ききり、それでいて、これみよがしに全人生を肯定するようなこともなく、そこにあるのは60年代風のスタイルと、当時の再現と、そうしたことへの関心や、出演する俳優たちが当時の人物を演じることがすべてだ。ともすれば、ジェフリー・ラッシュの演じるピーター・セラーズよりも、『レディ・キラーズ』のトム・ハンクスの方が似ているのかも知れない。けれども、当時と同じように再現された撮影セットの中で1シーンを同じように演じるのを見せられると、ピーター・セラーズの模倣とシャーリーズ・セロンの華やかさでピーター・セラーズは十分に讃えられていて、それでこの映画の存在意義は十分であると感じさせる。
原作となっているROGER LEWISによる「The Life And Death OF PETER SELLERS」という書物は、ピーター・セラーズの数あるバイオグラフィーや評伝とされるもののひとつにすぎず、そのなかでは、比較的に裏話的な部分に焦点があたったものだろう。そんな伝記ともフィクションとも区別の付かないような書物を、誕生から死にまたがる全人生の時間を網羅しつつも、何かを明らかにするという意志を離れ、唯一の正しいやり方で映画化した、そんな作品なのだと思う。
投稿者 nobodymag : December 3, 2004 08:11 AM
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