journal
« previous | メイン | next »
May 10, 2007
『スパイダーマン3』サム・ライミ結城秀勇
[ cinema]
前作同様クモの巣型のフレームの中にこれまでのシリーズで語られてきたストーリーの断片的なイメージが映し出されていくオープニングタイトルの終わりで、それまで直線的だったクモの巣型フレームは丸みを帯びて脳内のニューロンめいたかたちへと変形していく。そして物語は主人公ピーター・パーカー(トビー・マグワイア)のモノローグで幕を開ける。あたかもそれがパーカー=スパイダーマンの脳内であったかのように。
この微視的なまでに対象に寄ってしまったカメラが、『スパイダーマン3』の特徴を表している。今回の敵役であるサンドマンやベロムが能力を得るきっかけ、細胞への異物の侵入や肉体の分子分解という要素がそれに呼応しているということだけではない。毎回毎回「戦う相手は実は知り合い」な、ニューヨークという大都市を舞台にしているとは思えない設定を持つスパイダーマンだが、今回は特に小さな社会で物語が展開する。なにしろ初めから敵は、パーカー=スパイダーマンであることを知ったうえで戦いを仕掛けてくる(あるいはスパイダーマンはサンドマン=伯父を殺した男なのだと知っている)。もしくはMJ(キルスティン・ダンスト)しかり。彼女はスパイダーマンがパーカーであることを知っているがゆえに嫉妬する。結局のところ、今回の登場人物は皆が皆、あまりに似通っている。『スパイダーマン』『スパイダーマン2』のダンストのパロディであるかのような、ブライス・ダラス・ハワード。男たちは肉親を殺された憎しみに燃え、女を取られた嫉妬に狂う。誰もが誰も、個人的な理由以外に戦う理由がない。サム・ライミは執拗なまでにそれだけを描く。
他人が自分にないものを持っている、その嫉妬の連鎖が今回の物語のすべてだが、実はそこに関わることのできる者がみな「ギフト」を与えられた者だということは留意に値する。望むと望まざると「ギフト」を手に入れた連中が自分のためだけに戦っている。本当の意味で「持たざる者」はこの物語にまったく関わり合うことができない。ブライアン・シンガーが『スーパーマン・リターンズ』で描いたような世界ーー倒れたスーパーマンを復活させたのは押しかけた群衆ではなくひとりの肉親ーーをライミは推し進める。格差は拡がっている。『スパイダーマン2』では、スパイダーマンの戦いの観客でありその戦いの中で彼に力を与えることができたはずのNY市民は、『スパイダーマン3』においてはモニター越しに、あるいはカメラのファインダー越しに彼を眺めるしかない群衆=モブに成り下がっている。スパイダーマンはもはや隣人ではない、スーパースターなのだ。スパイダーマンの活躍を映し出す街頭モニターをにんまり眺めるトビー・マグワイアにひとりの男が声を掛ける。「ひとりの人間が世界を変えられるんだぜ!」。そう、世界を変えられる人間もいる。しかし大多数はそうではない。そこで伯母がプロポーズを決意した甥に言った言葉が本当に意味を持つのではないか?「自分以外の誰かを自分よりも本当に大切に思うことができるか」。それは誰かを許したり許さなかったりすることとは、根本的に別問題だ。スパイダーマンは虫ケラみたいな群衆のために戦うことができるのか?
おそらくまだ続編が続くだろうこのシリーズだが、ライミは続投するのか?もししないなら、サム・ライミの「スパイダーマン」三部作は希望のかけらもないサッド・エンディングを迎えたことになる。
全国ロードショー中
投稿者 nobodymag : May 10, 2007 05:29 PM
Search
Archive
- May 2011(12)
- April 2011(5)
- March 2011(3)
- February 2011(5)
- January 2011(7)
- December 2010(3)
- November 2010(8)
- October 2010(7)
- September 2010(5)
- August 2010(2)
- July 2010(4)
- June 2010(8)
- May 2010(5)
- April 2010(7)
- March 2010(5)
- February 2010(8)
- January 2010(11)
- December 2009(12)
- November 2009(7)
- October 2009(5)
- September 2009(7)
- August 2009(6)
- July 2009(15)
- June 2009(13)
- May 2009(13)
- April 2009(17)
- March 2009(22)
- February 2009(25)
- January 2009(7)
- December 2008(13)
- November 2008(16)
- October 2008(14)
- September 2008(7)
- August 2008(10)
- July 2008(5)
- June 2008(12)
- May 2008(13)
- April 2008(11)
- March 2008(6)
- February 2008(16)
- January 2008(12)
- December 2007(15)
- November 2007(9)
- October 2007(5)
- September 2007(9)
- August 2007(16)
- July 2007(13)
- June 2007(18)
- May 2007(16)
- April 2007(9)
- March 2007(19)
- February 2007(16)
- January 2007(18)
- December 2006(9)
- November 2006(7)
- October 2006(9)
- September 2006(11)
- August 2006(11)
- July 2006(6)
- June 2006(7)
- May 2006(9)
- April 2006(8)
- March 2006(19)
- February 2006(19)
- January 2006(4)
- December 2005(6)
- November 2005(4)
- October 2005(15)
- September 2005(19)
- August 2005(23)
- July 2005(14)
- June 2005(28)
- May 2005(21)
- April 2005(22)
- March 2005(40)
- February 2005(17)
- January 2005(8)
- December 2004(13)
- November 2004(21)
- October 2004(15)
- September 2004(8)
- August 2004(19)
- July 2004(11)
- June 2004(13)
- May 2004(13)
- April 2004(10)
- March 2004(19)
- February 2004(7)
- January 2004(26)
- 2003
- 2002
- 2001