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June 3, 2004

イングランド対日本

[ book , sports ]

ユーロに向けた最後の強化ゲームである対日本戦。イングランドはベストメンバー。2トップにオーウェン、ルーニー。ダイアモンドの中盤は、スコールズをトップ下に、両翼がベッカムとジェラード、ボランチの位置にランパード。ディフェンスは、テリーとキャンベルのセンターバックに、コールとギャリー・ネヴィル。
日本は、このゲームも3バック。3-5-2の布陣。玉田と久保の2トップに、俊輔のトップ下。ボランチに小野と稲本、両翼に加地とアレックス。3バックは宮本を中心に、坪井と中澤。ジーコはもう4バックを使わないのだろう。それほどの創造性があるとは思えないが、この人のよいところは頑固ではないことだ。よいと思ったら、過去のことを簡単に忘れることだ。2年前は4バックを全員入れ替えたし、今度は、3バックは好きじゃないと言いながら、少し良い結果が残ると、3バックを続ける。海外組と国内組というジーコの頑固さが批判されているが、批判に対して意地になって自分の主張に固執するところがこの人にまったくない。戦術はないのだから、フレキシブルにやればよい。
対するエリクソンには戦術がある。4-4-2の布陣こそイングランド・スタイルだが、アーセナルのように中盤をフラットに並べるのではなく、ダイアモンド型にするのが、エリクソンの方法だ。スコールズを頂点にベッカムとジェラード、そしてランパード。この中盤は、すごい。日本の心配は、起点になるベッカムとジェラードをどう押さえ込むかだ。
案の定ゲーム開始から、不安が現実になる。アレックスと加地のペアはジェラード、ベッカムに及ばない。中盤でパスをビシビシ通され、得点は時間の問題と思われたが、イングランドもそれなりに問題を抱えているのだ。オーウェンとルーニーの2トップではなかなか点は取れないだろう。特にルーニーが消えている。オーウェンも使われるタイプだ。ヘスキー、オーウェンというリヴァプール・コンビの方がバランスが良いように思える。
日本も少しずつだが、ディフェンスが対応し始める。小野とアレックス、稲本と加地がペアで、それぞれジェラードとベッカムにプレッシャーをかけ始める。だが、ようやく対応でき始めるころ、当然と言えば当然だが、ジェラードが真ん中に移動し、ぽっかり空いたコースにシュートを打たれる。楢崎の正面にシュートが来たのに、何たることか、楢崎はキャッチミスし、正面にボールがこぼれる。オーウェンが見逃すことはない。せめてコーナーに逃げるという選択をしておけば、この得点はなかったろう。
だが、イングランドにとって問題なのは、このチームがポゼッションに圧倒し、攻め続けたのは、1点取るまでだけだったことだ。エリクソンは合宿の疲れを理由にしたが、もっと強いチームなら、疲れていれば、それなりにゲームを支配する方法を心得ているはずだ。ここからクレヴァーな小野を中心に日本の組み立てが始まった。玉田、久保がディフェンスからのボールを拾えるようになり、伸二がゲームを支配し始める。後半開始10分でアレックスからのマイナスのクロスを伸二がゴールにたたき込む。このアタックが見事だったことは認めるべきだろう。イングランドの穴は、ギャリー・ネヴィルだ。
それから両チームとも選手を入れ替え始める。1-1で良いと考えたのだろう。どちらもリスクを冒さず選手を試す時間にシフトチェンジした。だが、ここで両チームとも現在抱えている問題を露呈させることになってしまった。入れ替えた選手がまったく活躍しないのだ。日本では、鈴木、柳沢が、イングランドではダイヤー、バッセル、バットなどがまったく機能しない。レギュラーと控えの差が大きく、エリクソンはフランス戦の心配事が増えたろう。稲本はバットと激突し全治3ヶ月。幸い福西も遠藤もいる。あえて書かなかったが俊輔は次のワールドカップに出場するのはまちがっている。足下でボールをこね回し、アタックを遅延させるのに役立っただけだし、唯一のメリットであるフリーキックも枠に飛ばなかった。やはりヒデだ。

梅本洋一