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August 11, 2004

アジアカップ決勝 日本対中国

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3-1というスコアはそのまま両チームの差だと考えていいと思う。中国のフットボールを見ていると、監督が誰であろうと、かなりシステマティックでパワープレー中心に落ち着いてしまうようだ。フラットな4人のディフェンス、ボランチを挟んで3人の攻撃的MF、そして2トップ。応用力のあるチームではない。言われたことは忠実に実行できるかもしれないが、展開によって臨機応変に対応する力はまだ備わっていないようだ。フラットなバックラインの背後にスペースがあり、そこを狙おうとするのは俊輔ばかりではないだろう。事実、3点芽の玉田は、見事に背後を突いた。
それにしても、予選リーグの対タイ戦よりも、このゲームの方が、ずっと落ち着いて横綱相撲をとっていたというか、まったく危なげない勝利を収めた。このチームが次第に懐の深さを見せ始め、悪いときは悪いなりに勝利を拾ったり、引き分けに持ち込んだり出来、そして、対バーレーン戦やヨルダン戦に見られたように、ここで1点欲しいときにはその1点が取れるようになったことをどう考えればよいのか?いささか古い3-4-1-2というフォーメーションで、トップ下に俊輔を据え、メンバーを固定して戦い始めてから、このチームは負けない。それほどファンタスティックに勝つわけではないが、負けない。これは誉めなければいけない。何も指導しないジーコの功績かもしれない。選手たちが自主的に考えて、局面を打開することができる。W杯アジア予選の対オマーン戦、対シンガポール戦で愚戦を繰り返し、デモまで現れたジーコへの批判は、ヨーロッパ遠征でかなり好ゲームをし、アジアカップに優秀したことで沈静化するだろう。
だが「これでいいのだ」とこの方向を全面的に支持することはできない。このチームの問題点は、何よりも両サイドの選手の力不足だ。加地とアレックス。このふたりがゴールライン一杯まで攻め上がり、そこから効果的なマイナスのクロスを上げるのをほとんど見たことがない。彼ら二人が、両サイドからの突破に蓋をし、相手のアタックを中央に絞った姿を一度も見たことがない。彼らが上がった(それも高々中盤までだ)背後のスペースに宮本や田中が引き出され、チャンスを作られたシーンはそれぞれのゲームで何度も繰り返されている。頑固なジーコはこのふたりを交代させない。三浦淳もいるし、藤田もいるのに、このふたりを使い続ける理由が私にはまったく分からない。
そして、オリンピック終了後、U-23 から何人がこのチームに上がってくるのか。そして小野、ヒデ、高原、稲本……。彼らも絶対に必要な選手だ。いままでにこのチームがしたベストマッチはおそらく対イングランド戦だろうが、あのゲームでの小野と稲本のパフォーマンスは、やはり誉めておかなければならない。彼らが加わってアジアカップのこのチームはどう変貌していくのか。このチームに欠けているのは、システムが不在のために起こるスピードアタックの非在とサイドアタックだ。そして、より臨機応変なフォーメーションへの対応。

梅本洋一