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June 9, 2005

W杯アジア予選 北朝鮮対日本 0-2
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 日本代表は淡々とドイツ行きの切符を手に入れた。そう、淡々と。歓喜も悲劇もなく、淡々と。
 その事実は、さらに別のふたつの事柄を浮き彫りにする。ひとつは──このひとつは「淡々と」の大きな理由だが──アジア出場枠4.5というのは、楽に予選を進められるということ。ヨーロッパの各地の予選を見る限り、落とすのが惜しいチームが多い。それに最低2ヵ国は強豪チームが入っているグループリーグで1位にならなければプレーオフに回される。だが、アジアに与えられた枠から、4チーム中2チームになれば、オーケーだ、というのは、バーレーン、北朝鮮、イランと4つの国を並べてみると、よほどの番狂わせがないかぎり、始めから結果が見えている。もちろんアジアカップでの対バーレーン戦の死闘も記憶に新しいし、未知の国・北朝鮮という不安もあったろうが、2位に入ることには最初からほとんど問題はなかった。下手なゲーム運びをして取りこぼさない限り、ワールドカップには出場できるはずだった。
 しかし、それでも──と、別のひとつについて書こう──日本代表は強くなった。多くの弱点は抱えているが、それでもアジアの中の5位になることなどなかろう。大黒のロスタイムでの決勝点やバーレーンのオウンゴールなどラッキーもあったが、たとえそのラッキーがなくても、負けたのはイラン戦だけ。「負けないチーム」になったのは、アジアカップからだろう。そして何度も書くが「負けないチーム」は、「圧勝しないチーム」でもあった。そして、バーレーン戦、北朝鮮戦と圧勝はないが、安定して勝つことのできるチームになってきた。おたおたせず、バタバタせず、諦めず戦えるチームになった。新聞紙上にジーコが就任以来の戦績が掲載されている。「負けないけれど、圧勝しないチーム」の戦績が語るのは、格下に対しては親善試合以外は負けないことであり、格上に対しては、好勝負に持ちこめることはあってもほとんど勝てない(例外は対チェコ戦の1-0──久保のスーパーシュートが思い出される)。確かにアジアレヴェルでは、常に最強に近い位置を得られるようになったが、もう一段上のステップアップが必要になる。対ドイツ戦0-3を忘れてはならない。
 そのためにどうすればいいのか? コンフェデ、東アジア選手権と続く公式戦の中でステップアップを図ることだ。もし代表チームというのが、「ファミリー」というよりは、目的を同じくする「プロ集団」だとすれば──ジーコはそう思わないだろう──、キャスティングを変えることだ。人材の豊富な中盤の組み合わせに頭を悩ませるよりも、端的にFWだ。もし2トップなら久保と高原に徹底して怪我を治しコンディションを合わせてもらうしかない。そして両サイドだ。加地とアレックス以外のメンバーをもっとテストしてみることだ。とくにアレックスに固執するジーコのやり方は納得できない。「本職」の左サイドバック(あるいはウィングバック)を発掘することだ。コンフェデではメキシコとギリシャには勝ち、ブラジルと好ゲームをして、決勝トーナメントに残れば、このチームもひと皮むけるだろう。