« previous | メイン | next »

August 9, 2005

トライネイションズ2005 スプリングボクス対ワラビーズ 22-16 スプリングボクス対オールブラックス 22-16
梅本洋一

[ sports , sports ]

 同じ点差、同じ内容(つまり共に1トライずつ)で2つのPGの差でスプリングボクスがホームのゲームで連勝している。スタッツを見たわけではないので、正確なことが書けないが、印象でいえば、両ゲームともポゼッションでスプリングボクスが勝っていたわけではない。ワラビーズ、オールブラックスのアタックに対してスプリングボクスのディフェンスという構図は2ゲームとも変わらないのだが、ワラビーズとオールブラックスのアタックのメソッドが異なる限り、スプリングボクスのディフェンスのシステムも2ゲームで異なっている。
 まずアタックのシステムだ。ワラビーズはラック、リサイクルというリズムは基本的に変えないが、グレーガンがボールを得ると、少しだけ背後に下がり、センターあるいはフランカーの間でパス交換を行い、その後に密集へのクラッシュ。先シーズンからこの方法は採用されていたが、先シーズンはいまひとつ目的が明瞭ではなく、単にアタックの遅延を生んでいただけだが、今シーズンは、このアタックの遅延を故意に生むことで、シャローで飛び出してくるスプリングボクスのアタックの的を絞らせない効果を狙っているようだ。少しでもディフェンスの薄いところを狙い、突破が試みられている。それに対してオールブラックスのアタックは、まずFW周辺で素早いボールを出し、フラットラインでロングパスが放られ、最終的には走力のあるウィングで勝負する方法。ピッチがワイドに使われ、ロングパスがウィングに渡るときにはもうディフェンスがいない。こう書くとワラビーズもオールブラックスも快勝するはずだが、現実は甘くない。
 対ワラビーズ戦。スプリングボクスは、シャローで突き刺さるディフェンスを少しずつ包み込むようなディフェンスに変えていき、最初はワラビーズが故意に遅らせたアタックを、真の意味で遅延させてしまうことに成功した。つまり、バックスにボールが回る回数を減らし、局地戦に持ち込んだのだ。体重はスプリングボクス有利。もちろん密集でのジョージ・スミスの活躍があり、何度かターンオーヴァーに成功したが、それでも決定的なボールを出し、トライに持ち込むことはできなかった。
 対オールブラックス戦。オールブラックスのフラットラインは去年よりもずっと進歩し、素早いボール出しとロングパスが成功したとき何度かトライライン近くまでボールを運ぶことができたが、こうしたアタックはいくつもの要素が同時に成功しない限り、美しい成功を見ない。まず密集でスプリングボクスが徹底してボールに絡み、ボール出しを遅らせ、パサーにプレッシャーをかけ続けることで、ウィングにきれいにボールが渡るシーンを減らした。ここではいつものシャロー!
 だが、スプリングボクスのアタックは、両ウィングの個人技に頼るものであって、システマティックに熟成されていない。もちろんワラビーズもオールブラックスもスプリングボクスのディフェンスを打ち破るもっと有効な手段を考えてくるだろう。