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September 6, 2005

シックスネイションズ2005 オールブラックス対ワラビーズ 34-24
梅本洋一

[ architecture , sports ]

 今年のシックスネイションズのラストゲーム。このゲームにオールブラックスが勝てば優勝、ワラビーズは負ければ全敗。明暗がはっきりするゲームだった。予想としてはオールブラックスの大勝。そして前半はほぼその通りにゲームが進行する。ラインアウト、スクラム共にオールブラックスの完勝。ワラビーズはディフェンスに終始、そしてこの日SOに入ったマット・ロジャースのキック。だが、もちろんオールブラックス・ボールのラインアウトになるから、不利な展開が断ち切れない。フェイズを重ねながらボールのリサイクルを反復するというワラビーズのアタックが、もう時代遅れであることが証明されたようなものだ。ワラビーズのアタックを断ち切る方法はふたつ。まずセットプレー──スクラム、ラインアウト──でワラビーズを上回ること、そして、ラックでイージーにボールを出させず、徹底してボールに絡んでいくこと。このどちらでもオールブラックスの目論見は当たり、大差のゲームの予感さえ漂った。ブランビーズ流のアタックも、もう終わりなのだ。
 だが、後半に入ってワラビーズがリズムを奪う。マイボールのラインアウトから広く展開し、前半のリードで油断の出たオールブラックスのディフェンダーを振りまわし、ついには、この日もSOに入ったマクドナルドのキックがチャージされ──対スプリングボクス戦と同じ──、あっという間にリードがなくなる。グラハム・ヘンリーはあわててマカリスターを投入し、オールブラックスはふたたびリズムを取り戻す。冷静にPGを蹴りこみ、リードを広げ、結局10点差で逃げ切ることに成功した。
 最後に今年のトライネイションズのまとめ。前述したとおり、セットプレーが弱かったら、フェイズを重ねるアタックはできない。スプリングボクスはシャローにでるディフェンスでフェイズを断ち切り、オールブラックスはセットプレーの充実でワラビーズにアタックに入る暇を与えなかった。つまり、接点周辺で大きくスキルが改善され、ラック──リサイクル──ラックという「詰まらぬ」アタックでは、トライが取れないことが証明された。こうしたディフェンスの充実に対してアタックは、まだ新たな方法が見つかっていないようだ。スプリングボクスが右ウィングのハバナの快足に頼り、オールブラックスもロコゾコ、ハウレットの個人技頼り。フラットでワイドなラインを思考するがパススピードがそれほど速くないので、ディフェンスが追いついてしまう。だからキックパスということになるが、それもまた新しい戦法ではない。ディフェンスの充実に比してアタックの方法が編み出されていないのだ。カウンター(スプリングボクス)か、個人技のトライ(オールブラックス)。W杯まであと2年。この間にどんなアタックが発明されるだろう。