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February 19, 2006

トリノ・オリンピック観戦記──3
梅本洋一

[ book , sports ]

ジャンプ ラージヒル個人
 つい深夜までライヴで見てしまった。追い風がだいたい2メートルぐらい吹いているこういう日は強いものが勝つ。もちろん、たまたま向かい風が吹く運もあるだろうが、カルガリーのニッカネンのように、こういう試合は僅差の力で勝負がつくことが多い。なかなか飛距離の出ない1本目で一戸もかなり遅くまでトップを守っていた。アホネン、ロメレン、キュッテル、ハウタマキ等の一流どころも僅差のまま。予想通りの面白さ。だが、葛西は彼らよりも5メートル足りず、伊東大貴は問題にならない。今シーズンの好調の岡部は勝負になっている。だが、その中でヨケルソイ、コフラー、モルゲンシュテルンは他の選手よりも5メートル遠くへ飛んだ。つまり1本目は125メートル以上飛ぶことで勝負になり、メダルのためには130メートル必要だったということ。もし追い風が2本目も続き、距離が伸びないとすれば2本目にも130メートル近く飛び2本揃えれば勝負になるかもしれないと思った。つまり、メダル圏内は日本人では岡部ひとり。
 そして2本目。ほぼ予想通りの展開。まず葛西が128.5メートル。そしてアホネンも同じ距離。だが、これでは足りないのは目に見えている。トップ5の失敗という条件の下に入賞が良いところ。伸びないマリシュ、1本目よりも距離を縮めたロメレンでは勝負にならない。W杯1位のヤンダは流石に伸ばしてきたが、1本目の122メートルが響く。岡部、128,5──彼の実力だろう。だがオリンピックで勝つには実力通りの力では無理なことはすでに何度も証明されている。もちろん岡部がメダルに残ってほしいと思ったが、現実は甘くない。ハウタマキ、129.5。ノーマルヒルでゴールドのビストール、131.5──勝負に入ってきた。K点ではなくジュリディスタンスの勝負になってきた。ここからだ。この時点で岡部のメダルは消えた。入賞が良いところだろう。1本目のトップ2は信じられない距離を出していく。まず結果的にゴールドのモルゲンシュテルン、140! ジュリディスタンス! そして1本目1位のコフラー139.5! 葛西や岡部より10メートル以上長い。どんな条件でもジュリディスタンス勝負になるんだ。1998年のW杯当時なら、船木が原田が斉藤が岡部がジュリディスタンス勝負に参加していた。アホネンもマリシュももう時代に取り残されている感じだ。