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March 9, 2007

チャンピオンズリーグ アーセナル対PSV
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 今年のアーセナルのチャンピオンズリーグは終了した。圧倒的にポゼッションしつつ、1点のアウェイゴールを喫し、昨日のバルサに続いて去年の決勝に残った2チームが消えた。
 敗因は何なのか? ぼくは相手がPSVで、1stLegは0-1で敗れているが、今度はホームで、しかもこのスタジアムができてからアーセナルは不敗だったことだろうと思う。もし相手がバルサやミランだったら話が違ったろうし、アウェイだったから戦い方も異なったろう。誰の目から見てもひとりひとりの力はアーセナルが上であって、しかもホームの圧倒的なサポーターを前にして2流選手と元オランダ代表のロートル(コクー)しかいないチームに負けるわけがないと考えたこと。一般的に奢りというのが正しいだろう。
 昨年のアーセナルはCLをほぼ4-5-1で戦い、守備的と言われようが専守防衛と言われようが、とにかく無失点というテーマを追い続け、それに成功して決勝まで残った。いざとなればアンリだった。アンリ依存症という批判があった。アーセナルらしいパスフットボールを封印したという批判があった。でもスポーツは勝てば官軍。結果がすべて。成功だった。
 今年はここまで困難なゲームはなく、何となくここまで勝ち上がった。そして決勝トーナメント1回戦はPSV。アウェイで1点とられて負けたがホームが残っている。アウェイゲームでのポゼッションはできたし、たまたまカウンターで1点とられただけ。大丈夫だろう。誰もがそう思ったろう。ぼくもそのひとりだ。
 チームの分析が足りなかった。アンリの怪我は思いの外重い。アデバイヨールとジュリオ・バティスタの2トップは得点力が低い。ロシツキも怪我。センデロスも本調子になく、エブエが怪我。ほとんどスクランブル体勢が出発なのだ。ギャラスとジウベルトのセンターバック。トゥレを右サイドバック。センターにセスクとデニウソン。両サイドにフレブ、ユングベリ。レギュラー陣がそのまま自分のポジションに入れるのはセスクと両サイドだけ。これでは潜在的な戦力でPSVと互角だろう。けれどもヴェンゲルもそしてぼくらもアーセナルの方が強いと確信していた。カウンターとセットプレイで敗れる典型的なパターンだ。
 アレックスのオウンゴールでトータル同点。そしてヴェンゲルは完調でないアンリを送り出す。これではダメだ。ここで4-5-1の選択をし、PSVに敬意を払えば、勝てたろう。ジュリオ・バティスタの交代は当然として、そこにアンリではなく、たとえばディアビ。もし4-4-2を保ちたいならユングベリをそこに入れる。そうしたら悪くても延長だったろう。アンリ、ロシツキを欠き、エブエを欠いたアーセナルは強くない。そこから出発しなかったことが敗因だ。もちろん、誰もが言う通り、このチームは改造中だ。デニウソン、ウォルコット──皆才能がある。しかし、ここ一番で踏ん張れるジウベルトが後ろにしかいない。前戦で皆を鼓舞できる人材がいない。若い人たちに一番欠けているのは何よりも経験だ。