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July 9, 2007

アジアカップ2007:カタール対日本 1-1
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 勝てるゲームを引き分けてしまった。そう誰でもが書くだろう。阿部の与えたFK。そのときの壁の作り方も隙があった。セバスティアンの蹴った低い弾道のシュートがゴールマウスに吸い込まれる。川口は、あってはならないことが起こってしまった。オシムは憤懣やるかたない様子。
 だが、ゲーム自体はまったく消化不良。こんなゲームをしていては、3連覇はおろか予選リーグも危ない。暑さと湿気は分かっている。でも、全員がこれほど動き出しが遅いゲームは、監督がオシムになって初めてのことだ。タイミング良くパスプレーができない。憲剛も俊輔もボール離れがワンテンポ遅い。高原のワントップでパスコースが限られているのも分かる。カタールの引いた守備も見える。こういうゲームは、シュートパスをテンポ良く繋ぎ、3本目で大きくサイドチェンジがもっとも適切だろうが、誰もが足が鉛のように動かない。
 今日の代表は、まるで足にくさびが打ち込まれてでもいるように、皆、自分の持ち場を離れようとしない。横パスが何本も連続しながら、ポゼッションが鰻登りに上がっていくのを見ると、監督はイヴィチャ・オシムではなく、ジーコが留任しているような感じ。名波からポンポンスルーパスが通されたトゥルシエ時代のアジアカップとも異なる。走らなければこの監督のフットボールは意味をなさない。それはオシムにも分かっていた。だから彼は山岸→羽生。動きが出てきた。そして、次の一手は、もし憲剛を代えるなら、そこにセカンドストライカーのはずだ。つまり、佐藤寿人。佐藤寿人が入った段階で、遠藤をもとの憲剛の位置に移動させる。パスの出所と出し所の位置関係がはっきりするはずだ。だが、現実は憲剛が橋本に代わり、動きは再び停滞する。こうなったら、カタールが狙ってくるのはカウンター一本。だから、もっと徹底してショートパスに拘り、遠藤を下げることでボールは落ち着いたはずだ。
 あるいは、加地を下げて3バックという選択肢もあったろう。だが、実際は走り屋の山岸を、別の走り屋に代え、ボランチをボランチ同士で代えただけだ。こういうゲームを見ていると、オシムは育成型なのではないかと思えてしまう。代表の監督というのは、リスクを冒しても、勝つことだ。