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August 1, 2007

アジアカップ2007総括
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 日韓戦はPK戦で敗れ4位に終わったアジアカップ。このチームで6ゲーム戦えたことは収穫だったが、それ以外に何か得たものがあったろうか。多くの人々がオシムの方向性の正しさを指摘するが、実際はトゥルシエよりもジーコよりも成績が悪い形でアジアカップを終えている。検証すべきものが多いだろう。
 敗戦に終わったサウジ戦後の韓国戦。フレッシュな選手を使うかも知れないと言っていたオシムだが、実際は山岸を使い、カタール戦と同じワントップにしただけ。「もう一度選手を見極めたかった」と言っているが、連戦と疲労を考えると、見極めるべき選手たちのパフォーマンスが落ちていることは分かっているだろう。多くの人々が言うように、高原と俊輔だけを欧州から呼び戻し、中田浩二も稲本も呼んでいないことから、レギュラーと控えの差が選手層の薄さを示してしまったのかもしれない。オシムの選手交代が当たったことはない。羽生も佐藤も矢野も結果を残すことができないままアジア大会を終えた。
 6ゲーム全体を見渡すと、次のような印象を持った。中盤は確かに良い。遠藤と俊輔が左右にいて、憲剛と啓太が中盤を押さえる方法も成功していた。だが、問題は、有効に見えるサイドチェンジを行ってから、両サイド(加地、駒野)で有効なクロスが少なかったこと。もちろん、ふたりがよりスピードを上げることが理想だが、走る速さが上がることもないので、もう一段の仕掛けが必要かも知れない。また後半、ゲームが停滞している時間は、憲剛と啓太の運動量が減ってくる時間と重複している。前にも書いたがこのチームは、憲剛のチームなのだ。だが、その彼が疲れてくるとオシムは必ず憲剛を羽生に代える。3バックにして中盤を増やし、そこに運動量を誇る選手を入れるという選択肢もあったろう。さらに啓太が疲れてくると中盤が空いてくるし、憲剛、啓太がこのチームの生命線なのだとしたら、啓太のところに今野を投入すれば憲剛への負担も軽減されたはずだ。
 こんなことが言えるのではないか。つまり、オシム自身も語るように、ジーコやトゥルシエのフットボールよりも、彼のフットボールは魅力的なものだが、高温多湿な場所でそのパフォーマンスを維持するためには、後半のしかるべき時間帯に適切なカンフル剤を打っていく必要が生まれる。だが、オシムはその注射の位置を決めるのがうまくない。リスクを背負っているのだから、点を入れられるのはある程度仕方がないと言われるが、中盤をコンパクトに保つことで、バックラインが1対1になるケースはある程度避けられるはずで、スピードで阿部が振りきられる場面を減らすには、憲剛と啓太のところでもっと「走る」必要がある。ここにカンフル剤を打たねばならないのだ。
 9月にはオーストリアとスイスでのアウェイが待っている。より涼しい環境と良いピッチの中でどんなフットボールを見せられるだろう。そして、オシムにのぞむのは、良いフットボールを誇示するだけでなく、パフォーマンスが落ちているゲームでも采配で勝てるところを見せてほしいということだ。