« previous | メイン | next »

January 13, 2008

ラグビー大学選手権決勝 早稲田対慶應 26-6
梅本洋一

[ music , sports ]

 慶應は早稲田を徹底的に研究してきた。ゴール前のモールに対しては低い姿勢で人数をかけ、ライン攻撃には低いタックルで応戦。そして、早稲田もボールを散らすのではなく、慶應が研究してきたフェーズを正面からついていく。だから、点差は開かない。前半風上の慶應はSOからのキックで早稲田FWを背走させ、エリアマネジメントをしっかり行い、自陣のスクラムとモールを避ける作戦。だが、早稲田は、それを避けずに常に真っ向勝負。ここにも点差の開かなかった原因がある。
 冷たい雨が降りしきる天候の中で、早稲田は普段通りのアタックを繰り広げるから、ノックオンやキックのブレ、そしてパスの乱れが生じるから、普段通りのアタックは不発に終わる。学生同士のゲームだから、このゲーム・プランでいいのかもしれないが、ぼくが中竹なら、山中にきたボールを全部蹴るように指示するだろう。決勝戦は勝てばいい。そして、慶應が「魂のタックル」で抵抗するのなら、それを交わすために密集戦を避けて、ゆっくりしたボール展開に持ち込み、じりじり攻めればミスを誘うだろう。前半、点差が開かないのは、慶應のディフェンスに壺に早稲田のアタックがはまったからだ。
 そして、後半。山中も五郎丸もキックを上げ始めると、慶應ディフェンスは、じりじりと下がっていく。これでいい。事実、前半にはひとつしか奪えなかったトライが、後半には3つ生まれる。早稲田の完勝だ。
 慶應は、確かに林監督のディフェンスの方法が当たったろうが、このゲームでトライを奪えるような場面は皆無だった。すがすがしくタックルし、たまにラインブレイクもあるが、早稲田の2次防御に簡単に掴まってしまう。オーソドックスにボールにキープし攻め続ける方法をとらなければ早稲田に勝てないのだが、ボール・キープができない。これでは接戦はあっても勝つことはできない。山田にボールが渡る場面もあったが、トライ・ラインからは遙かに遠かった。
 早稲田側に問題はなかったが。慶應が持てる力を出し切ったのに対して、早稲田は完勝したが、ストレスが残るゲームだったろう。まず山中の判断ミスが多かった。素直に回せばいいものを、ボールを長く持てる長所が災いして慶應のタックルの餌食になる場面も多かった。シャローで来るディフェンスに対してはキックかセンター・クラッシュ。そして継続。あるいはウィング勝負。この日のコンディションを考えれば、まずキック、そして、ウィングまで回すが、正しい。彼の才能は認めるが、何と言ってもゲーム経験が乏しいことを露呈した。何度も書くが、このチームは、この勝利に満足しては行けない。単に当然の勝利だ。ここからが権丈組の力量が試される局面になる。