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November 27, 2008

08-09チャンピオンズリーグ アーセナル対ディナモ・キエフ 1-0
梅本洋一

[ sports , sports ]

 いろいろ情報を収集してみるとアーセナルの危機は本物だった。何度も書くがインジュリー・リストを賑わすレギュラークラスは9人。既報のエドアルド、ロシツキ、ウォルコット、サニャ、アデバイヨール、トゥレ、エブエに加えてナスリとディアビまでもシティ戦で膝を負傷した。これだけで1チーム出来るくらい。そして、4-2から4-4のドローに終わり、勝ちゲームを落とした対トットナム戦のハーフタイムに起こったギャラス事件。士気の低下に怒ったギャラスに対して、「6歳下の選手がかみついた」(ギャラス)事件だ。ギャラスは、この選手の名を公表していないが、ファン・ペルシだと伝えているサイトを見つけた。ギャラスはキャプテンマークを剥奪され、マンチェスター遠征には参加しなかった。そして、ヴィラ戦の惨敗、シティ戦の完敗。これでチームが空中分解しない方がおかしい。
 だから、ホームでのディナモ・キエフ戦、アーセナルは絶対の勝利を運命づけられていた。キャプテンマークは、21歳のセスク・ファブレガスが正式に受け継ぐことになった。「ビッグクラブのキャプテンなんて名誉なことだ」と語って彼はピッチに立った。
 この日のスタメン。アルムニア以下、左からジュルー、ギャラス、シルヴェストル、クリッシ、ラムジー、セスク、ソング、デニウソン、そしてヴェラとファン・ペルシ。センターバックには腕に何も巻いていないギャラスとシルヴェストルのヴェテランフランス人コンビ。キエフの執拗なプレスにもボールが回る。何よりもシティ戦でイエロー累積で出場停止だったセスクの復活が大きい。ガンナーズのキャプテンマークを巻いても、同じように飄々と相手を交わし、前戦にスペースにパスを送り続ける。やはりこのチームはセスクのチームなのだと誰でもが実感する瞬間。だが、いつものような流動感は乏しい。シティ戦で標的にされたデニウソンを一列前に上げ、負担を減らすことで彼のメンタルは戻ってきているようだ。だが、ジュルー、ラムジーの右サイドはまったく機能しない。サニャ、ウォルコットの俊足コンビに比べるとまるでスローモーション。次第にセスクはラムジーにパスを送るのを諦めてしまう。そしてセスクの相棒のソングの不安定ぶりにも目を覆ってしまう。ギャラスは彼にとってこのゲームがとても重要であることを理解し平均点以上の出来だった。けれどもポゼッションはしているけれど、ラムジーとヴェラが持ちすぎてなかなかシュートまでいかない。悪いパターンが繰り返される。幸いアルムニアの好セーヴで、シティ戦のようにハーフタイム直前の失点を喰らうことはなかった。
 そして後半23分、ヴェンゲルは意を決してラムジーを下げ、ベントナー投入。今、このチームに必要なのは、何よりも勝利である。セスクからのロングボールがベントナーに収まり、彼の左足から放たれたシュートがキエフのネットを揺らした。足下がおぼつないばかりか、メンタル面が弱いこのデンマーク人の若者が「男になった」瞬間である。またヴェラに代わって入った16歳のウィルシャー。顔も体もまだ子どもだが、いかにもヴェンゲル好み。落ち着き払ってキラーパスを通そうとする驚くべき16歳だった。
 結局ベントナーの一発でゲームが決まった。そして土曜日にはチェルシー戦。ディナモ・キエフ戦は何とか勝ったが、次節も怪我人は戻らない。