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December 29, 2009

ラグビー大学選手権2回戦 帝京対早稲田 31-20
梅本洋一

[ sports , sports ]

 帝京完勝のゲーム。対抗戦では両チーム、ノートライで6-3で早稲田が勝ったが、大学選手権では帝京がリヴェンジした。
 かつての伝統を知るぼくらにとって、ロスタイムに入っても早稲田がトライを返し、ひょっとしたら勝利をたぐり寄せるのではないかと期待してしまったが、今年のチームには、そんなポテンシャリティはなかった。
 今年の早稲田を総括する前に、まずこのゲームのおさらい。さっき帝京が完勝と書いたが、FW戦で早稲田を圧倒した。スクラムこそほぼイーヴンだったが、特にブレイクダウンでは完全に帝京。確かにウェイトでは平均6キロ上回るが、ふたりの留学生選手の能力を存分に発揮した。対する早稲田は、有田、中田が欠場し、スクラムとラインアウトの中心を欠くことになり、FW戦で劣勢に立たされる。さらに、SOのミスキックや判断ミスで、せっかくのチャンスを捨ててしまう。FWが劣勢でゲームメイクが間違っていれば、このゲームのような結果が出るのは自明のことだ。
 かつての軽量FWを知る者から言えば、この程度の劣勢は「織り込み済み」であって、30%程度ボールが出れば、バックラインでトライを取れたろう。だが、今年のチームは、本当に凡庸だ。何度も書くが、プレイの選択を誤るSO。フレアのない両センター。ディフェンス力が低い両翼。これではバックス勝負にもならない。中竹は選手がうまくならなければチーム力は上昇しないと語り、自主的な判断を求めるが、選手の長所短所を見極めて、各自にベストポジションを与えるのは、選手の自主性ではなく、あくまで監督の役割だ。たとえばプレイの選択を誤るSOの選手をよく観察すると、SOよりもFBで使えば、もともと備えているキック力や体の強さから、かなりよいFBになったのではないか。あるいは12番に使う手もあったろう。つまり、今年のチームは、選手たちのポテンシャリティを引き出すように構成されていない。同じような問題が6番にもある。小柄だがよくタックルに行っていたが、もし最初から有田をフッカーではなく、6番で使っていれば、このFWはもっと強くなれたのではないか。もちろん肋骨の骨折で出場不能だったとは言え、有田は不動の2番ではない。そしてナンバー8。彼はもともとウィングだったらしい。突破力やサイズの問題から8番に起用したのだろうが、もし彼をタッチライン近くに控える「仕留め」役に起用したなら、このバックスの決定力はずいぶん増していたのではないか。
 選手個々のスキルや身体能力の向上、そして判断力の養成は必要だし、ゲームを読み、その流れをどのように引き寄せるかを見極める能力の向上も必要だ。だが、選手は、自分の役割を選べない。配置の原則という大枠の中でしか彼らの能力は発揮されない。その意味で、監督とは選手たちの潜在能力を引き出し、それをチームの総合力に変えていく役割がある。選手たちの自主性に任せることは確かに忍耐力がいる作業であることは知っているが、最終的に、自らが預かった選手たちをピッチに送り出し、彼らが最大の力を発揮できるようにする作業を行うのは監督だ。