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October 1, 2011

ラグビーW杯2011──(6) フランス対トンガ 14-19 イングランド対スコットランド 16-12
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 ワラビーズ対アイルランドに続いて2戦目のアップセットが対フランス戦のトンガの勝利。具体的には異なるけれど、抽象的なレヴェルで考えれば、トンガの勝因はアイルランドと同じ。戦術を単純なものに落とし込んで、自分たちの長所を活かす戦いをすれば、たとえ相手の方が力が上でも僅差の勝負に持ちこめるということだ。1対1のぶつかり合いになればトンガは負けない。さらに重量級のSHと走力抜群のナンバー8とウィングにボールを集めてゲインラインを重ねれば、フランスの柔いディフェンスが崩れるか、PGをもらうチャンスが生まれる。作戦はそれだけ。後はディフェンス、頑張ります。
 フランス側にしてみれば、彼我の差があると最初から信じ切っていたようで、おそらく後半になればトンガの走力がなくなり、ラインに穴が空いてトライが可能になったり、優位なスクラムが功を奏すると考えていたろう。ぼくだって、後半20分からフランスのバックスが走り始めるだろうと思っていた。だが、対ジャパン戦でもそうだったようにトンガの走力を衰えず、「勝ちたい気持ち」が切れることはなかった。このゲームだけを考えれば、フランスの敗因は、ヤシュヴィリの不調──フランスは伝統的にSHがチームを動かしていく──と、ルージュリの柔さだ。リエヴルモンは、その時間帯から決まってパラをトラン=デュックに代えるのだが、ヤシュヴィリの不調を見れば、パラ=トラン=デュックで後半のアタマからいき、ラインを動かすべきだったろう。
 だが、もっと深いところで考えてみると、リエヴルモンのレ・ブルーは「リュギュビー・・フランセ」を標榜してはいるが、彼の就任当初にフレアの利いた「リュギュビー・・フランセ」を1〜2ゲーム見せてくれたが、それからずっと特長のないチームになってしまっているようだ。余りに長い間「フレア」を忘れてしまっているので、もう誰もそんなものを思い出せないのかもしれない。かつてなら、「フレア」の中心になるはずのバックロー陣とスリークォーターに、「フレア」を垣間見せる可能性を感じさせてくれない。

 そしてイングランド対スコットランドも最後の最後まで勝負の趨勢が決まらないゲームだった。スコットランドがトンガやアイルランドのように戦術を絞ってきた。キックを中心に戦い、キックで点を入れていく、というもの。一方のイングランドのキッカー、ウィルコはその肝腎なキックが不調。クロスゲームになった原因がそこにある。スコットランドFWはイングランドの強力FWに拮抗して頑張り続け、最後はキック。しかし、フィットネスの面でややイングランドが勝った。両チーム唯一のトライがノーサイド間際のアシュトンのもの。「地力」とか「底力」といった論理を欠いた「なんとなく使ってしまう」言葉があるが、ついそんな言葉を使いたくなってしまう幕切れだった。