特集『ソング・サング・ブルー』
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『ソング・サング・ブルー』の中盤、「世の中には新しいものを買える人間もいれば、私たちみたいに使い古しを継ぎはぎするしかない人間もいる」というセリフが吐き捨てられる。『ハッスル&フロウ』と『ブラック・スネーク・モーン』ではもはや若いとは言えない人物たちを物語の中心に置き、それからはリメイク(『フットルース 夢に向かって』)や長い空白を挟んだ続編(『星の王子ニューヨークへ行く2』)がフィルモグラフィを占めるようになったクレイグ・ブリュワーの仕事と、「使い古し」という言葉はどこか響き合う。題材の選択のみならず、たとえば残念ながら劇場公開されなかった最近の2作、『ルディ・レイ・ムーア』と『星の王子ニューヨークへ行く2』は、スクリーンから遠ざかり、過去の人になりかけていたエディ・マーフィーの再起にブリュワーが手を貸した作品にほかならず、そのようにオリジナリティから距離を取ることへの躊躇いのなさが却ってこの作家を先鋭的に見せている。だから代表曲「スウィート・キャロライン」の大ヒットからすでに30年近くを経たニール・ダイヤモンドの、しかもそのトリビュートバンドを組む夫婦を題材とした『ソング・サング・ブルー』は、同名のドキュメンタリーを元ネタにしているという意味でも、かつて(60年代末に)流行った曲を今更(90年代に)歌う人たちについての話という意味でも、まさにこれ以上なくブリュワーらしい題材だと言える。
ただし、ブリュワーにとっての問題は、古さをいかに懐かしむかでも、いかに現代風に更新するかでもない。中古品を修理しながら使い続けた際に残る「修理痕」のように、有名無名を問わず、人や作品に堆積した時間とともにある「現在」をいかに捉えるかという点にあるだろう。その問いに対するブリュワーなりの応答は、作品ごとに形を変えながら探求されてきた。本特集では、『ハッスル&フロウ』から『ソング・サング・ブルー』に至る、そうした試みの変奏を振り返る。
