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March 15, 2005

ラグビー:6 Nations 2005 アイルランド対フランス 19対26
梅本洋一

[ cinema , sports ]

ランズダウンロードの雰囲気は独特だ。ダブリンには行ったことがないが、この昔ながらのラグビー・スタジアムは素敵だ。風の強い快晴の空がいっぱいに広がっている。アイルランドは、ことラグビーに関しては、北アイルランドとアイルランドの合同チームが出る。だからゲーム前の「国歌斉唱」もアイルランド国歌とアイルランド・ラグビー協会の歌の2本立て。いつもちょっと長いけれど、ここで客も選手も泣く。泣きながらゲームが始まる。万感の思いがこみ上がってくるのだろう。アイルランドは決してクリエイティヴなラグビーはやらず、いつも質実剛健というか、朴訥で誠実なラグビーを信条としている。タックルはサボらない。皆で助け合う。ゲーム前、そんなことを考えているし、なんだかこのチームに勝たせてやりたくなる。それに今年はイタリア、スコットランド、イングランドに勝ち、久しぶりにグランドスラムのチャンスだ。キャプテンのアウトサイドセンター、オドリスコルも大好きな選手だ。アイリッシュはオで始まる選手が多いね。
最初の得点もSOのオガーラのPG。アイルランドのスタイルは、いつものオーソドックスなラグビー。そしてフランスは、この日もウェールズ戦の前半と同じように、ドゥレーグがキックを封印し、やや速度はないが奇妙にタイミングのとりにくい──つまりタックル・ポイントがわかりにくい──パスを中心に組み立てる。FWもラックから速い球出しではなく、ボールを奪ったらまずモール。ラック、リサイクルの繰り返しではなく、遅攻。もちろん強烈な風の吹く中での風下だったから当然の選択かもしれないが、これでBKラインに余裕が生まれる。モールでFWが頑張ると、ポジショニングに余裕が生まれ、多彩なパスが通るようになる。怪我人が多く出ているが、FWのメンバーはだいたい固定され始めた。特にベッツェン、ニアンガ、ボネールの第3列は、スピードとポジショニングで、ベッツェン、マーニュ、アリノルドキに劣るが、シュアなディフェンスは次第に精度を高めている。特にボネールのタックルは良い。それに比べると、BKラインはゲームごとに人が入れ替わる。この日は、ドミニシ、エマンスの両ウィングに、ジョジオン、バビの両センター、そしてウェールズ戦で鮮烈なデビューが飾ったラアラグのFB。初キャップのバビが攻守に冴えを見せる。特に左にワイドに振って、見事なラインブレイクを見せたバビのトライは、今年のシックス・ネイションズでもっとも綺麗なトライだった。ボールが回るとフランスは本当に強い。アイルランドは愚直なディフェンスで対抗するが、スペースを与えられれば、展開力が優れた方が勝つのは当然だ。トライ数3対1。フランスの久しぶりの完勝。ラポルトは、FWのパックの勝利だと言ったが、この人が成果を見せ始めた2002年の秋を思い出せば、当時も怪我人に泣き、若手を大量に起用しないとフィフティーンが揃わないときだった。ボネールにせよ、バビにせよ、ラポルトの誤算が新たなフランスを創造していくような気がする。