journal
« previous | メイン | next »
April 05, 2009
『フロスト×ニクソン』ロン・ハワード結城秀勇
[ cinema]
ボクシングの試合に見立てられたふたりの男のパフォーマンス。そこに賭けられているものはなにか。前代未聞のインタヴューの為に動く巨大な金、そのために一喜一憂してみせる人々の俗人ぷりが単なる韜晦でしかないことに観客はすぐ気付く。『ボディ・アンド・ソウル』、『ハスラー』、あるいはハワードの『シンデレラマン』などを引き合いに出すまでもなく、そこにあるのは栄光、たぶんアメリカと呼んでもいい栄光だ。ここに見られる老練な技術と若々しい勢いとの対決という構図にもかかわらず、『フロスト×ニクソン』は新旧の交代劇ではない。彼らの戦いにおいてなにかがなにかに取って代わられるというようなことはなく、また受け取るに値するなにかを巡ってそれを受け取る資格を持つふたりの人間が向き合うのでもない。ここに賞金としておかれたものは、既に失われた栄光/アメリカである。自らの失策/犯罪によってそれを失墜せしめ失ったニクソンにとってそうであるばかりではなく、イギリスとオーストラリアのテレビ番組の人気司会者として名を馳せるフロストにとっても、アメリカはこれから開拓すべき新大陸として現れるのではない。なぜこんな無謀な試みを行うのか、という問いに対するフロストの回答を聞けばそれがわかる。「ニューヨークを去るときの気持ちが君にわかるか」。
その見た目にもかかわらず、ふたりは既に老い、疲労し、敗北し、間違っていた道を歩んできた同じ人間なのだという解釈が、ニクソンの口を借りて語られる。決してその栄光を受け取るに値しないふたりの男による偽タイトルマッチ。決められたスケジュールに沿って淡々と進んでいくかのような、第三者の証言を交えてのなめらかな語り口の途中で、ぽっかりと空いた穴のようにフロストとニクソンのプライヴェートな会話(あるいはニクソンの独白と言うべきか)は置かれている。我々は共に敗者なのだからどちらかが勝たねばならない。その言葉にかかわらず、最後に残るのが大いなる敗北に過ぎないことを観客は知る。敗北を写し取ったクロースアップこそが歴史を変えたのだと。この作品の元になった舞台劇において、この敗北のクロースアップはどのように演出されていたのだろう。
投稿者 nobodymag : April 5, 2009 09:17 AM
Search
Archive
- May 2011(12)
- April 2011(5)
- March 2011(3)
- February 2011(5)
- January 2011(7)
- December 2010(3)
- November 2010(8)
- October 2010(7)
- September 2010(5)
- August 2010(2)
- July 2010(4)
- June 2010(8)
- May 2010(5)
- April 2010(7)
- March 2010(5)
- February 2010(8)
- January 2010(11)
- December 2009(12)
- November 2009(7)
- October 2009(5)
- September 2009(7)
- August 2009(6)
- July 2009(15)
- June 2009(13)
- May 2009(13)
- April 2009(17)
- March 2009(22)
- February 2009(25)
- January 2009(7)
- December 2008(13)
- November 2008(16)
- October 2008(14)
- September 2008(7)
- August 2008(10)
- July 2008(5)
- June 2008(12)
- May 2008(13)
- April 2008(11)
- March 2008(6)
- February 2008(16)
- January 2008(12)
- December 2007(15)
- November 2007(9)
- October 2007(5)
- September 2007(9)
- August 2007(16)
- July 2007(13)
- June 2007(18)
- May 2007(16)
- April 2007(9)
- March 2007(19)
- February 2007(16)
- January 2007(18)
- December 2006(9)
- November 2006(7)
- October 2006(9)
- September 2006(11)
- August 2006(11)
- July 2006(6)
- June 2006(7)
- May 2006(9)
- April 2006(8)
- March 2006(19)
- February 2006(19)
- January 2006(4)
- December 2005(6)
- November 2005(4)
- October 2005(15)
- September 2005(19)
- August 2005(23)
- July 2005(14)
- June 2005(28)
- May 2005(21)
- April 2005(22)
- March 2005(40)
- February 2005(17)
- January 2005(8)
- December 2004(13)
- November 2004(21)
- October 2004(15)
- September 2004(8)
- August 2004(19)
- July 2004(11)
- June 2004(13)
- May 2004(13)
- April 2004(10)
- March 2004(19)
- February 2004(7)
- January 2004(26)
- 2003
- 2002
- 2001