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January 3, 2004

天皇杯決勝 ジュビロ磐田VSセレッソ大阪

[ cinema , sports ]

サイドの出来がチームの攻撃力を左右する。セレッソ大阪は明らかにそんなチームだ。3-5-2の右サイド酒本がジュビロ(こちらも3-5-2だ)左サイド服部に詰め寄る。センターラインを越えた辺りで奪ったボールを中央前線のバロンへ。ワンタッチで落としたところに走りこむ森島はシュート!ではなく逆サイド大久保へダイレクトパス。シュートこそ打てなかったものの、開始早々のこのシーンが、セレッソ唯一最大の攻撃パターンであり、そして今試合における最大のチャンスだった(もちろんこれは<ゴール>ではない。あくまで<チャンス>だった)。
中央に司令塔を持たないセレッソには、つまり高い位置でボールを奪うこと、しかもそれをサイドで実行することが重要となる。そして、サイドから裏を狙うにせよ、中央に当てるにせよ、ゴール前の勝負どころでは必ず大久保、バロン、森島が絡むこととなる。
だがふたつのことがセレッソの攻撃を失速させる。まずひとつ。中盤におけるプレス勝負に真っ向から立ち向かったこと。藤田のいないジュビロにかつてほどの中盤力はないにせよ、やはりセレッソに比べれば一枚も二枚も上手だ。均衡した時間帯もあったが、逆にいえば均衡が精一杯。もしセレッソが勝ちたかったのなら、右サイド酒本(あるいは後半から投入された徳重)をもっともっと高い位置に固定させるべきだった。守備はスリーバックと両ボランチに任せておけばよい。攻めは上記の3人と、サイドアタッカーをプラスした4人。難しいことは考えずにそれで勝負すべきだった。ふたつめ。前線のバロンの出来が悪すぎ。これは決定的にまずい事態。つまり、たとえ高い位置でボールを奪ったとしても、次の選択肢は、一直線に大久保を裏へ走らせるしかなくなるからだ。彼がすべきだったのは、とにかくディフェンス2枚(鈴木と田中)の間に位置すること。そうやって自ら相手ディフェンスをコントロールし、大久保と山西とのマッチアップの状態を作らねばならなかった。
以上のふたつは、敗因であるとともに、もちろん逆にいえばチャンスでもあった。ジュビロは、西(彼の動きはこのチームのバロメーターだといってよい)を酒本にぶつけることでサイド勝負に勝利し、鈴木を大久保につけ、そしてバロンにできるだけ低い位置(つまり全くの無危険地帯)でボールを持たせることに成功する。
このバロンと大久保とのコンビネーションは、少しばかり日本代表を思い出させた。そしてこの試合の<MVP>名波を見たわれわれは、とにかく彼を日本チームに必要としていることに気づくのだった。

松井宏