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September 15, 2004

セリエA ローマ対フィオレンティーナ

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セリエAの04−05シーズンが開幕したのだが、例年になく今年のセリエは瞠目に値するものになるだろう。凡そのクラブが新戦力を補強し、指揮を執るコーチ陣が刷新されたからである。そのなかでも、中田英寿が移籍したフィオレンティーナは伏兵ながら上位を狙えるような補強を成功させた。ミッコリ、ポルティージョ、マレスカ、ヨルゲンセン、オボド、ギグー、そして中田を加えた新生ヴィオラは、セリエにおいて台風の目になるに違いないというのが大方の予想だ。マーケットが閉ざされる間際に滑り込んできた選手や慣れない異国のカルチョに戸惑う選手もいるだろうから、そう簡単にチームとして熟成されはしないはずだ。しかし、この選手の名前を眺めるだけで、頭の中にあらゆるフォーメーションを思い描かずにはおれない。ある程度上質のパーツは揃った。あとはいかに組み立てるかにかかっている。

そして、そのヴィオラが開幕で渡り合うのは、これもまたチームの布陣を変更したローマである。しかし、このローマがヴィオラと決定的に異なるのは、その変更がクラブの財政難によるところが大きく、むしろ消極的なものとなってしまったことである。カペッロをユーベにやむなく放出し、エメルソン、サムエルを欠いてしまったのは大きな損失であるのは間違いない。しかしそれでも、トッティとカッサーノのコンビは相手の脅威であるし、セリエ若手最注目のデ・ロッシが攻撃にアクセントを加えるのは必至であろう。ローマは今年も「ビッグ4」から漏れることはない。ヴィオラにとってローマは、自らの力を試す格好の相手になる。

その注目の一戦は互いに一人ずつの退場者を出すゲームになった。前半13分ヴィオラのDFビアリが決定的なミスを犯し、トッティのジャージを引っ張り一発レッド。ヴィオラはアタッカーを一人減らさざるをえなくなった。しかしローマは攻めあぐね、次第にトッティの表情が険しくなる。ローマはフィールドをワイドに使えない。そして前半ロスタイム、苛立ちを募らせ、切れてしまったのはトッティではなく、弟分カッサーノだった。相手の挑発に乗り、手を出してしまったのだ。昨今、悪童たる自らを反省し「プロ」らしくなりつつあったカッサーノではあるが、相変わらずだと言う他ない。しかし、私が最も興奮した場面はこのカッサーノの張り手であると正直に告白しよう。それほどまでに、この試合は詰まらないものだったし、後半の印象などほとんどなくなっている。この両チームが演じた試合はまだサッカーになりえてない。システムやフォーメーションが形になっていないというより、それ以前にパスミスが多い。それにプレスをかけるべきところで選手の意思疎通が計れていない。事実この試合ではファールが多かった。これはプレスが上手くいかなかったことを証明する。このように、両チームともいまだチームの「約束ごと」さえも理解しえてないのだから、好ゲームになるはずもないのだ。
しかし、長いシーズンは始まったばかりである。改善点を模索しながらの船出ではあるが、前途多難というわけではないだろう。無論、この両チームには優れた選手が数多くいる。それらのパーツを上手く組み立て、機能させるのが、設計者たるコーチである。今後モンドニコ、フェラーの手腕に注目したい。そして、ローマ戦のヴィオラにはまだ決定的なパーツが欠けていた。言うまでもなく、その個々のパーツの一部であり、ときに潤滑油となる中田英寿だ。中田がヴィオラのシャツに袖をとおしたとき、チームがいかに機能するか、いかに変貌するか、それを頭に浮かべながら次の週末を待つ。それもサッカーの愉楽のひとつだ。サッカーの季節が始まった。

小峰健二